2015 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー水素イオン照射によって促進されるメゾ多孔性ニッケルの核種変換
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26610192
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
大原 渡 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (80312601)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プラズマ・核融合 / 多孔性ニッケル / 水素正イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
熱陰極PIG放電による水素プラズマを,ヒータ加熱で温度制御されたNi多孔体板(厚さ1 mm,気孔率96.6%)へ照射した.水素正イオンの照射は,照射エネルギー 300 eV,照射電流 200 mA,多孔体板温度600℃一定となるよう調整した.6時間または42時間イオンを照射した場合のNi多孔体サンプルを作成した.なお,既に発表されている報告では,核種変換しやすい形態はパウダー状とのことなので,Ni多孔体板の一部にNiパウダー(< 50 nm)を塗布してイオン照射を行った. Ni多孔体板の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察しながら, エネルギー分散型X線分光法(EDX)によって元素分析を行った.Niパウダーはイオンの照射によって自己融着して固まっており,多孔体の網目がパウダーで埋まった状態になっていた.表面元素分析(EDAX GENESIS)を実施したところ,イオン照射前に比べてC, O, Si, Feが増加していた.なお,Niパウダーはイオン照射の前後で元素組成に変化が見られなかった.クロスチェックとして別の装置(Hitachi S-4700)で分析したところ,Siは検出されなかったことから,イオン照射で増加した元素はC, O, Feであることが明らかになった. 表面ではなく,Niパウダーを含めた金属内部に含まれる元素を調べるために,ICP発光分光分析を実施した.サンプルを硝酸に溶解させて,残渣を除去して分析を行った.検出された元素はK, Na, Fe, Zn, Coであった.炭化物は硝酸に溶解しないので,黒色の残渣は炭化物であるといえる.以上より,イオン照射によって増加した元素は,炭化物とFeが主な元素といえる.Niが核種変換してCが形成されたとは考えにくい.FeはCoと共に測定されたが,SUS304からスパッタリングで付着した可能性もある.よって,水素イオン照射によって核種変換が行われた,という明確な証拠は得られなかった.
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