2015 Fiscal Year Research-status Report
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26620004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菱川 明栄 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (50262100)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強レーザー場 / 微粒子生成 / ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにフェムト秒レーザーフィラメントを強レーザー反応場として用いることで, (i)エチレンから水素化アモルファスカーボンが生成されること, (ii)レーザー強度の増加とともに解離反応が促進されsp2炭素を多く含む微粒子が生成すること, を見出した。本年度は,レーザーフィラメントを発生させる強レーザー光に加え, 解離反応を誘起させる光を導入することで気相エチレンの会合反応の制御を試みるとともに, その反応過程を明らかにすることを目的とした。強レーザー光の強度を1 mJ/pulseとした場合,白色の生成物が得られ, その顕微鏡像から大きさが数μm以下の微粒子の生成が確認された。一方,制御光として第二次高調波を加えると, 白色の生成物に加え, 集光点付近に黄色の生成物が観察された。白色の生成物のラマンスペクトルには蛍光のみが観測され, 水素分率の高い水素化アモルファスカーボンの生成が示唆された。これに対して黄色の生成物のスペクトルには蛍光成分以外に幅広いラマンピークが観測され,低水素分率アモルファスカーボンが含まれていることが明らかとなった。このことは,先の研究でレーザー強度の増加とともに見られていた生成物の変化が,強レーザー場とエチレン分子の相互作用による解離反応の促進によって誘起されることを示している。また,気相ベンゼンをサンプルとしてレーザーフィラメントによる会合反応を試みたところ,粘性の高い黄色から黒色の生成物が得られた。MALDI, NMRなどによる分析から,多環芳香族炭化水素PAHの生成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,強レーザーパルスを集光して得られるレーザーフィラメントにおける微粒子形成過程を,主に炭化水素をモデル系として解明することを目的としている。本年度は,これまでに製作・構築した反応セルとラマン分光計測系を用いて,反応制御パルスを導入した研究を行った。その結果,わずかな反応制御光の導入によってエチレンからの微粒子生成が変化することが明らかになった。これは微粒子生成過程が光で制御できることを示す新しい知見である。またベンゼンを用いた実験では多環芳香族炭化水素の生成が見られるなど新しい結果が得られている。これらのことから,研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
エチレンから生成した微粒子についてはTEM-EELSによる粒径,元素含有比,sp2/sp3比の評価など,より精密な計測を行う。制御パルスのタイミングや波長,偏光などを系統的に変化させることで,反応場としての強レーザー場の特質を明らかにすることを目指す。また,ベンゼンについても生成物分析を進め,レーザー場における会合反応過程の詳細を調べる。
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Causes of Carryover |
一部物品の購入を実験の進捗に合わせて検討することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験の進捗を見ながら,次年度の物品の購入に充てる。
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