2015 Fiscal Year Research-status Report
含トリチウム水分子THOの分子振動の選択的励起によるin-situ分離
Project/Area Number |
26620017
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
奥山 克彦 日本大学, 工学部, 教授 (10185556)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トリチウム水 / β線検出 / 蒸発法 / レーザーイオン化高分解能質量選別法 / 汚染水 |
Outline of Annual Research Achievements |
重水D2Oに含まれる微量の三重水素水TDOの検出に成功した。当初計画では,大学内施設である「ふるさと創生支援センター」において定量を行う予定であったが,微量であること(785 Bq/L:1.01×10-12 mol/L),放出されるβ線エネルギーが極めて弱いこと(18.6 keV)の理由により,検出困難であることが判明した。この事実を受け,急遽当研究室で湿式法による検出と定量を試みた。湿式法とは高蛍光性溶液(Ultima Gold)に隔絶を設けず直接,検体を浸すことにより,発生する蛍光をフォトンカウントする方法である。新たにフォトンカウンター(SR-400)や鉛遮蔽箱の購入が必要になったが,検出は成功した。バックグラウンド200 countsのところ,検体を入れて220~250 counts程度である。しかし,まだまだ定量には至らず,今後の課題である。検出感度をさらに上げて,バックグラウンドレベルを下げねばならない。 次項にも記すが,上記理由により,研究進捗状況は遅れている。分離方法を提案した蒸発法から変更し,レーザーイオン化高分解能質量選別法にすることを考案中である。β線を放出する前のTDOを補足する方法としては有用であるが,効率は下がることが予想される。しかし,検体の中でTDOは最も質量の大きな分子である(TDO:21 m/e、D2O:20 m/e、HDO:19 m/e)ことは有利に働くと考えられる。 汚染水の入手も検討した。東京電力(株)に相談したが,福島第一原子力発電所内で扱うことは許されたが,所外持ち出しは厳禁とのことである。いずれの方法を行うにせよ,光源は大型であり,所内で行うことはできない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅れている理由を列挙する。THOが比較的多く含まれる原発汚染水が入手できなかったこと,正確に言うと原子力発電所の施設外へ持ち出せなかったこと。それに伴い,重水(D2O)に含まれるTDOを研究対象とせざるを得なかったこと。Aldrich社製の重水が他社と比べ量が多いことはわかったが,それでも濃度-12乗 mol/ Lのレベルであり,大学内の施設では検出が困難であり,自分達で検出することになったこと。湿式法で検出には成功したが,フォトンカウンターなど当初予定していなかった予算の支出が発生している。以上が遅れている理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況を考えると,当初の予定のすべてを試みることは困難である。赤外光照射下における沸点挙動の変化は,重水に含まれる極めて微量のTDOを対象に,試みるつもりであるが,赤外光は波長固定のYAGレーザー基本波(1064 nm)およびそのラマンシフター光とする。また,本研究は前提として「β線を放出前のトリチウムを捕捉する」ことを目的に進めてきているので,当初計画には記されていなかったが,既存設備(高分解能質量選別レーザーイオン化法)によるTDOの検出を試みるつもりでいる。その際の光源はArFレーザー(193 nm)を用い,2光子イオン化による検出を行う。
|
Causes of Carryover |
当初計画から遅れが生じている最大の理由は,福島原子力発電所の汚染水を実験室へ移送できなかったことにある。そのため,研究対象を市販の重水とし,そこに含まれる微量のトリチウム水TDOを検出せざる得なくなった。あまりにも微量のため検出が困難であったが,湿式法とフォトンカウンターを使うことで,前年度中に検出することはできた。しかし,当初計画していた前年度購入物品の変更が生じたため,その分,次年度使用額に変更が生じている。さらに,研究遂行の困難さから当初計画の変更も余儀なくされており,それに伴い次年度使用額の内訳にも変更が生じるものと考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
波長可変赤外光の使用をあきらめ,高出力の固定波長YAGレーザー(1064 nm)およびそのラマンシフター光を高原として用いることにする。領域的にはトリチウム水の対称伸縮振動の3倍音領域に近接しているので,選択励起は可能と考えられる。
|
-
[Journal Article] Radiocesium inventory on the campus of Nihon University, Koriyama, Fukushima, Japan2015
Author(s)
Naofumi Akata1, Katsuhiko Okuyama*, Yuri Tsujimoto, Natsu Takahashi, Mai Ishihara, Yusuke Arai, Takaki Itakura, Takatoshi Sato, Taiki Ogata and Hideki Kakiuchi
-
Journal Title
Radiation Emergency Medicine
Volume: 4
Pages: 57-61
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-