2015 Fiscal Year Annual Research Report
「加水分解産物からサリドマイドへの逆反応過程の検証と代謝経路の新規構築」
Project/Area Number |
26620019
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
朝日 透 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80222595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 真人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (30386643)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | サリドマイド加水分解産物 / 脱水反応 / X線結晶構造解析 / HPLC分析 / 反応速度論 / 量子化学計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、サリドマイドの第一段階加水分解産物3種類(CBG, PIG, PG)の有機溶媒中における擬脱水反応速度の定量を試みた。各加水分解産物及びサリドマイドを定量するためのHPLC分析条件を検討し、各物質の良好な分離条件を得た。一定温度のもとで放置したラセミ体CBG/エタノール溶液をHPLC分析した結果、サリドマイド由来のピークを確認した。また、同溶液において生成した結晶をX線構造解析したところ、サリドマイドの結晶構造が得られた。アセトニトリルを用いて同様に実験したところ、この場合にもサリドマイドの産生が認められた。以上よりCBGはエタノール及びアセトニトリル中において擬脱水反応によりサリドマイドに変化することが確認された。グルタルイミド環が開裂しているPIG及びPGはエタノール及びアセトニトリル中でサリドマイドへと変化しなかったことから、CBGにおけるフタルイミド環の再生成が最も優先的に起こり得ることが分かった。量子化学計算(B3LYP/6-31+g(d,p))ではサリドマイドからCBGへの加水分解反応の反応エネルギー障壁は150 kcal/mol程度であると見積もられるが、有機溶媒中では開裂したフタルイミド環の側鎖の挙動により、逆反応に要するエネルギー障壁が低くなることでこの逆反応が緩やかに起きていると考えられる。CBGのエナンチオマーを用いて同様な実験を行ったところ、擬脱水反応中でキラリティの反転は確認できなかった。よって、この擬脱水反応中では不斉炭素における水素原子の脱着は起こらないことが示された。反応温度を28℃から45℃と変化させると、反応速度はおよそ6倍となった。初期濃度を変化させると(0.2 mM及び5 mM)、反応速度に大きな差が見られた。これより、サリドマイドへの擬脱水反応は通常の一次反応ではなく、サリドマイドとCBGが互いに触媒的に作用する反応であることが示唆された。
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Research Products
(11 results)