2014 Fiscal Year Research-status Report
ナノ秒チャープパルスによる非線形ラマン分光の高感度・高機能化
Project/Area Number |
26620020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 康裕 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60213708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子分光 / CARS / コヒーレント分布移動 / 量子状態制御 / チャープパルス / 光パラメトリック増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、当該研究グループが独自に製作した周波数変調コヒーレントナノ秒パルス光源を用いて、新規なナノ秒CARS分光を開発することを目指したものである。チャープパルスによる断熱透過というコヒーレント制御を導入することにより、CARS分光の従来のデメリットを克服して高感度化を進め、さらに、極短パルスによるCARS分光において利用されている多彩なコヒーレント過程をナノ秒の時間領域においても実現し、高い量子状態選択性を有するナノ秒CARS分光の更なる高機能化を図ることを目的とした。 研究初年度である26年度は、コヒーレントナノ秒パルス光源のアップグレードに重点的に取り組んだ。これまでは、最終増幅段である光パラメトリック増幅(OPA)においてBiBOを非線形結晶として用いてきたが、光損傷閾値が比較的低く、現在の励起条件では容易に結晶破損が引き起こされる可能性があることが判明した。そこで、より光損傷閾値が高いLBOを非線形光学素子として利用するよう変更した。さらに、LBOはBiBOと比較してOPA増幅率が低いので、従来まではファイバー増幅器2段で前置増幅を行ってきたが、もう1段追加して計3段の前置増幅となるようにシステムを改良した。以上の改良をほぼ終了し、最終的な調整段階である。 実験的研究と並行して理論的考察も進めた。適切な周波数チャープを施して誘導ラマン散乱過程を誘起すれば、始状態から終状態へ完全に分布を移動することができることを、光学Bloch方程式を数値的に解くことによって確認した。特に、パルス光強度が10倍程度変動しても分布移動の効率は影響を受けないことが示され、チャープパルス断熱ラマン透過法が極めてロバストな手法であることを定量的に明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の中核設備である周波数変調コヒーレントナノ秒パルス光源は、当該研究グループが独自に製作した世界でも唯一の新奇光源であり、パルス出力や周波数チャープの程度などは本研究計画を実現するには十分の性能を実現していた。一方、研究実績概要でも記載した通り、ルーチン的に利用するには一部の光学部品のスペックに問題があることが判明し、本年度は対応策に注力する必要があった。そのために、当初予定していたナノ秒チャープパルス光源を利用したCARS分光システムの整備が若干遅れ気味である。また、研究代表者が分子科学研究所から東京工業大学へ移動したのに際し、研究設備一切を移設した。この移設作業の影響もあって研究の遂行に遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、研究代表者の所属変更に伴い研究設備一切の移設を行ったが、その際に、本研究計画の主眼であるナノ秒チャープパルス光源を利用したCARS分光システムの立ち上げが容易になるように、装置設置場所のアレンジを見直した。今後は、まず分光システムの構築に全力を注ぐ。その上で、常温セル中のH2 (D2), N2, O2, NOなどの2原子分子やCH4, C2H2, C2H4, C2H6, CO2などの基本的な多原子分子について回転ラマン遷移の計測を行い、CARS信号強度がチャープの程度に対してどのように依存するかを定量的に検討し、通常のナノ秒CARSに対する優位性を検証するプロセスに進みたい。当初の計画では、超音速ジェット中の気体試料や反応中間体などの微量成分の測定へと展開することを目指していたが、現在の研究進捗状況から判断して、研究対象を広げずにポイントを絞った取り組みを行うこととした。具体的には、シクロプロパンやシクロペンタン等におけるパッカリング振動やC2H6などにおける内部回転のように、低波数で大振幅な振動モードに関するラマン遷移の直接観測を目指す。
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Research Products
(12 results)
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[Presentation] Taking a movie of rotating molecules2014
Author(s)
Y. Ohshima
Organizer
International Workshop on “Coherence and Control in the Quantum World: Current and Future Trends”
Place of Presentation
Weizmann Institute of Science, Rehovot, Israel
Year and Date
2014-12-15 – 2014-12-18
Invited
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