2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒チャープパルスによる非線形ラマン分光の高感度・高機能化
Project/Area Number |
26620020
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大島 康裕 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60213708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子分光 / CARS / コヒーレント分布移動 / 量子状態制御 / チャープパルス / 光パラメトリック増幅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、当該研究グループが独自に製作した周波数変調コヒーレントナノ秒パルス光源を用いて、新規なナノ秒CARS分光を開発することを目指したものである。チャープパルスによる断熱透過というコヒーレント制御を導入することにより、CARS分光の従来のデメリットを克服して高感度化を進め、さらに、極短パルスによるCARS分光において利用されている多彩なコヒーレント過程をナノ秒の時間領域においても実現し、高い量子状態選択性を有するナノ秒CARS分光の更なる高機能化を図ることを目的とした。 研究代表者が分子科学研究所から東京工業大学へ移動したのに際し、平成26年度末に研究設備の一切を移設した。本年度平成27年度は、この移設に伴い各種設備の再立ち上げを行った。最終的には、周波数変調コヒーレントナノ秒パルス光源に各種の改良を施し、各構成部品の光損傷が起こりにくく、安定に出力が得られるシステムを構築することができた。 理論的な考察面では、まず、光学的Bloch方程式を数値的に解くことにより、周波数チャープを施した誘導ラマン過程によって、CARS信号を劇的に増強する「最大コヒーレント状態」を作り出すことが可能であることを確認した。特に、パルス光強度の変動に対しても結果が大きく影響されないことが示され、チャープパルス断熱ラマン透過法が極めてロバストな手法であることを定量的に明らかにできた。さらに、複数のシード光を導入することにより多段階誘導ラマン散乱過程を実現する可能性について検討した。中心波長とチャープ速度を適切に設定すれば、5段階のラマン遷移を連続的に引き起こし、90%以上の効率で目的とする量子状態に分布を移動することが可能であることが明らかになった。
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Research Products
(18 results)