2014 Fiscal Year Research-status Report
有機―無機複合LB法を用いる自立型ナノ光電荷分離膜の作製
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26620026
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宇佐美 久尚 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (60242674)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ多層膜 / Langmuir-Blodgett膜 / 光電子移動 / 過渡吸収 / スラブ型導波路 |
Outline of Annual Research Achievements |
Langmuir-Blodgett膜(LB膜)は単分子膜を構成単位として任意の積層順序で多層積層膜を形成できる。両親媒性の有機色素も組み込み可能であるため、積層膜を介した光エネルギー移動や光電子移動システムが報告されてきた。さらに、天然の光合成と同様に2組の色素による2段光励起電子移動システムや、水の酸化のような実質的な多電子移動との連携が課題である。膜物質の要件として、多層膜の安定性と伝導性を兼備し、光反応と比較して反応が遅い化学反応と連携するための電子の一時貯留機能が挙げられる。 本研究では、両親媒性分子と無機錯体とを複合化したLB膜を前駆体として、酸化物半導体ナノ薄膜を作製するとともに、積層方向の光電子移動を分光学的に観測することを目標として、高感度の過渡分光法の開発を目指した。 H26年度はNd:YAGレーザーを購入し、既往のスラブ型導波路分光システムおよび過渡吸収システムを組み合わせて、導波路上に積層されたナノ薄膜の過渡吸収および発光を測定するシステムを構築した。光源波長は1064 nmと532 nmに限定されるが、両親媒性のルテニウムトリスビピリジル錯体のLB膜を厚さ100μmのガラス基板上に積層させ、全反射条件を確保することにより単一分子膜の観測が可能となり、数百μsの寿命を持つりん光を観測した。スラブ内の多重全反射条件を確保するため、観測可能な寿命範囲は数十nsが下限であり、主に逆電子移動に伴う過渡スペクトルの観測が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H26年度に高感度レーザー分光システムを導入し、既往のスラブ型導波路分光システムおよび過渡吸収システムを組み合わせて、導波路上に積層されたナノ薄膜の過渡吸収および発光を測定するシステムを構築した。厚さ100μmのスラブ型導波路基板に複合LB法にてナノ薄膜を形成し、数百μsの寿命を持つ両親媒性ルテニウム錯体のナノ薄膜の過渡りん光スペクトルを観測した。スラブ内部の多段反射光路を持つので原理的に測定可能な寿命は数十nsよりも長い場合に限定されるが、単一分子層膜でも観測可能な高感度化を達成した。過渡吸収の測定も可能であるが、電子受容性色素と複合化したナノ薄膜の形成が難しく、ナノ薄膜を介した光電子移動過程の直接観測はH27年度の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の課題として、膜の安定性と光伝導性を兼備した酸化物ナノ薄膜の作製、色素ナノ薄膜との複合化と積層方向の光電子移動過程の直接観測を目指して研究を進めている。過渡吸収過程を観測するため、励起前後および電子移動前後の色素の吸収スペクトルと重畳しないスペクトルを持つ電子受容性色素を探索し、均質なナノ複合膜の形成を進めている。さらにルテニウム錯体とビオロゲンを複合化したナノ薄膜をモデルとして、過渡吸収スペクトルの測定系の課題を洗い出し、試作膜の測定準備を進めている。 一方、膜の両面で酸化反応と還元反応を分離して進める膜として、ナノ多孔質基板の作製と上記の光電子移動ナノ薄膜の担持条件を探索し、得られた膜の表面での酸化還元反応過程の分光学的な観測を目指す。
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