2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺尾 潤 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00322173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子ワイヤ / 積層型ポリマー / 分子チューブ / 機能性共役分子 / 電荷移動度 / 分子エレクトロニクス / シクロデキストリン / ロタキサン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、多様な被覆型機能性分子ワイヤの合成を可能とするため、汎用性の高い被覆共役分子合成手法の開発を行った。従来、環状分子を用いたロタキサン型被覆型共役分子の合成には、共役系が環状分子に貫通する特殊な条件下において、共有結合形成反応を行い、貫通構造を固定化することが必須であった。今回、新たに分子設計することで、共有結合形成反応を経ることなく、極性溶媒中における加熱のみによって貫通構造を構築し、得られた構造体は速度論的に安定に単離可能なユニットの合成に成功した。分子内スリッピングとして分類される本手法は、ロタキサン型被覆共役分子を構築する新しい手法として位置づけられる。様々な反応条件・分子骨格を検討した結果、メチル化シクロデキストリンを側鎖として連結した種々の共役系をメタノール水溶液中で加熱することで、対応する被覆型共役分子を高収率で得る手法を確立した。 続いて、この知見を利用して、主鎖に白金アセチリド結合を有する種々の分子ワイヤを合成した。得られた分子ワイヤの燐光発光特性を比較したところ、主鎖を三次元的に覆う被覆は、主鎖の熱運動に伴う三重項励起状態の失活を抑制し、燐光量子収率を向上させる効果が明らかとなった。当初想定されていなかったこの効果は、被覆による分子間相互作用の抑制効果と協同的に作用することで、固体中において燐光発光を増強させることが明らかとなり、機能性材料の物性を超分子科学の観点から制御できることから、分子材料における新しい設計指針を与えることが期待される。この現象は、化学系学術雑誌”Journal of American Chemical Society”に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
汎用性の高い被覆共役分子の合成法の開発に成功すると共に、本法を応用し、固体中において燐光発光特性を示す被覆型白金アセチリドポリマーの合成に成功した。また、被覆型共役分子を無機固体材料表面上に単分子性を保持した状態で高密度に導入することに成功すると共に、、被覆型分子ワイヤの燐光発光特性、自己修復機能、pHセンシング能等、数々の新しい知見も創出しており、研究開始時と比べ期待以上の研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性配線材料という観点から、金属がポリマーの物性に与える影響を明らかにする。合成した各種含金属被覆型分子ワイヤに対し、まず燐光に注目してその性能を評価する。1年目で得られた知見に基づき電子移動という視点から、三重項励起状態を効率的に被覆共役部位に移動させる分子ワイヤを設計する。これにより、励起状態を被覆によって安定化し、燐光が長寿命化される系を実現する。室温・大気下における燐光発光の実現を目標として、これを系統的な探索により明らかにする。さらに、得られた含金属被覆型分子ワイヤに対し、機能性配線材料として重金属元素に由来する電気・磁気的物性を評価する。具体的には、酸化還元とスピンに着目し、これに基づく外部刺激が分子内電荷移動度に与える影響を解明する。この検討によって、各種外部刺激に応答するスイッチング機能を有する配線素子として、その応用性を開拓する。これまでに得られた系統的な知見に基づき、分子内電荷移動度・機能性・安定性の観点から配線材料として最適な含金属被覆型分子ワイヤを選択し、ナノ電極間における分子配線を試みる。金属錯体との錯化重合を実現する他、自己組織化による配線効率への影響を評価し、その優位性を明らかにする。さらに、配線したナノデバイスに対し外部刺激を作用させることで、酸化還元に対するスイッチング挙動、スピントロニクス、発光における物性評価を行う。これによって含金属被覆型分子ワイヤを用いた、有用な分子エレクトロニクス材料への設計指針を提案する。
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