2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26620029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺尾 潤 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00322173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイメタロポリマー / 分子ワイヤ / 燐光発光 / 量子収率 / 電荷移動度 / 導電性高分子 / シクロデキストリン / ポルフィリン |
Outline of Annual Research Achievements |
被覆型白金錯体とルテニウムポルフィリン錯体との共重合によって合成した、従来にない被覆型バイメタロポリマーは、一酸化炭素ガスに応答して燐光発光強度が大きく変化するセンシング応答を示した。また、白金アセチリド結合が塩化水素によって開裂することを利用して、錯体はクロロホルム中紫外光照射によって生じた微量の塩化水素をセンシングしたことに加え、白金含有の被覆型分子ワイヤが固体中でも燐光発光することを利用して、固体状態における塩化水素ガスセンサの実現にも成功した。以上の結果は、被覆による燐光量子収率の増大と、金属錯体特有の反応性、さらには固体燐光発光に対する被覆効果など、本研究に特有の様々な効果を融合した新規機能性であるといえる。 さらに、金属含有の被覆型分子ワイヤの配線材料としてのポテンシャルを調べるため、固体中における分子内電荷移動度を測定したところ、金属錯体によって大きく変化することが明らかとなった。そこで、主鎖中に遷移金属を有する2種類の分子ワイヤにおいて、軸を伸縮させた際の軌道エネルギー変化を比較した。その結果、強固な共有結合によって金属が導入された分子ワイヤに比べて、柔軟な配位結合によって同金属が導入された分子ワイヤでは、熱ゆらぎが柔軟な配位結合に集中し、共役系がゆらぎの影響を受けにくいことが理論化学計算によって明らかとなった。この効果によって、共役系は準位が揃い、規則的なホッピングが金属を介して生じ、炭素共役系に匹敵する高い移動度を与えたと考えられる。このことは、機能の導入による移動度の低下も、適切な設計によって補えることを示しており、機能と伝導性を両立するための新しい方法論と言える。
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