2014 Fiscal Year Annual Research Report
高次超分子錯体を経る有機触媒的キラル光化学反応による不斉増幅
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26620030
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 佳久 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30112543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311769)
福原 学 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30505996)
西嶋 政樹 大阪大学, 産学連携本部, 助教 (70448017)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光化学 / 超分子化学 / 不斉合成 / 不斉増殖 / 高次錯体 / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 高次錯形成挙動の解明:アントラセンカルボン酸(AC)とプロリノール(P)が1:1、1:2、2:1、2:2錯体を形成することを明らかにするとともに、様々な分光法による滴定実験結果から各平衡定数を導出することにより、錯形成挙動の全貌を解明した。これにより、任意条件での各錯体の分布の計算が可能になった。 2. 高次錯体構造の解明:実際に光不斉二量化に関与し、CDスペクトルにおいて強い励起子カプレットを与える2:2錯体について理論計算(RI-CC2)を用いて、安定コンフォマー4種の構造を明らかにし、その理論CDを実測CDスペクトルと比較することにより、推定構造の妥当性を検証した。 3. テンプレートの探索:Pの水素結合ドナー部であるOHやNHをメチル化したり、立体障害や柔軟性を増した誘導体では2:2錯体が有効に形成できず、反応加速も有意なエナンチオマー過剰率(ee)も得られず、これらの官能基が錯体形成に関与する上記高次錯体構造の妥当性を実験的に支持する結果を得た。 4. 基質適用範囲の拡大:アントラセンジカルボン酸を基質とした系では、Pとの錯体が難溶性であるため、光反応実験に供することが出来なかった。一方、均一溶液中ではほとんど光環化二量化しないインデンカルボン酸や桂皮酸では、光二量化が大きく促進されることを見いだし、本高次錯体形成を利用した反応加速に汎用性があることを明らかにした。 5. 光不斉増幅系の構築:本系でL-、D-プロリノール混合系を用いた際に、ホモキラルな2:2錯体がヘテロキラルなものよりも安定であれば、錯体でのエナンチオマー選択性は(L/D)2になり、光反応生成物eeはテンプレートeeを上回ると考えられる。実際に、50%および75%eeのテンプレートを用いて反応を行ったところ、生成物の相対eeは63%ならびに80%となり、光有機触媒を用いた不斉増幅を初めて達成した。
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