2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620038
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小島 隆彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20264012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 触媒・化学プロセス / 鉄錯体 / 構造と性質 / 酸化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.トリス(o-フェニレンジアミン)Ni(II) 錯体と塩化ジエチルマロン酸との反応により、redox-non-innocentな大環状テトラアミド配位子(H4DTTM)をワンポットで合成した。その配位子と無水塩化鉄(II)を塩基存在下で反応させ、Fe(III)-Cl錯体、[Fe(DTTM)(Cl)]2-、を合成し、結晶構造解析、電気化学測定、各種分光学的測定により、その錯体のキャラクタリゼーションを行った。ESR及びメスバウアースペクトル測定の結果、[Fe(DTTM)(Cl)]2-は、S = 3/2の中間スピン状態にあることがわかった。また、電気化学測定の結果、2段階の可逆な酸化還元過程を示すことがわかった。 2.上記の[Fe(DTTM)(Cl)]2-をアミニルラジカルにより1電子酸化し、その1電子酸化体を単離することに成功した。この1電子酸化体、[Fe(DTTM)(Cl)]-の結晶構造解析により、結晶構造を決定した。また、そのESRスペクトルから、[Fe(DTTM)(Cl)]-はS = 1のスピン状態にあることがわかった。[Fe(DTTM)(Cl)]-は、固体状態におけるX線吸収端近傍構造(XANES)において、[Fe(DTTM)(Cl)]2-のそれより0.9 eV高い位置に吸収端を示し、Fe(IV)状態に近いことがわかった。ESRスペクトルでは、[Fe(DTTM)(Cl)]-はS = 1の状態にあることが示唆された。 3.[Fe(DTTM)(Cl)]2-をアミニルラジカルにより2電子酸化した錯体と、それをヨードシルベンゼンにより酸化した錯体は、同じ吸収スペクトルを示した。また、その2電子酸化錯体([Fe(DTTM)(Cl)])はS = 1/2のスピン状態にあることが、ESRスペクトルにより明らかとなった。また、[Fe(DTTM)(Cl)]は、固体状態におけるXANESにおいて、[Fe(DTTM)(Cl)]2-のそれより0.3 eV高い位置に吸収端を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、Ni(II)錯体を用いたテンプレート反応により、酸化還元活性な大環状テトラアミド配位子を1ポットで高収率に合成することができた。また、その配位子を有するFe(III)-Cl錯体の合成とキャラクタリゼーションを行った。その錯体の結晶構造を決定すると共に、各種分光学的測定により、電子構造を含めてその性質がほぼ解明できた。特に、2段階の可逆な酸化還元過程を示し、1電子酸化体、2電子酸化体がそれぞれ安定であることがわかったことは、今後の研究の展開にとって極めて重要であった。 さらに、1電子酸化体と2電子酸化体のそれぞれの結晶構造の決定にも成功し、酸化に伴う構造変化を明らかにすることができた。また、それぞれのXANESスペクトルから、1電子酸化体と2電子酸化体は、それぞれ主としてFe(IV)状態及びFe(III)-配位子ビラジカル状態にあることが示唆された。しかしながら、各錯体の結晶構造解析の結果は、それぞれFe(III)-配位子ラジカル状態及びFe(III)-配位子ビラジカル状態を示唆しており、明確な結論に至ってない。 また、2電子酸化体の合成は、電子移動酸化でも、ヨードシルベンゼン(PhIO)を用いた酸化でも可能であることが判明した。このことは、PhIOを用いてもFe(III)-Cl錯体からはFe(V)-オキソ錯体が生成しないことを示しており、その合成経路を再考する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.1電子酸化体及び2電子酸化体のキャラクタリゼーションの完結に向けて、それぞれの錯体のメスバウアースペクトルを測定することにより鉄中心の酸化状態を確定し、それら錯体の電子構造を明らかにする。 2.Fe(V)-オキソ錯体の合成:[Fe(DTTM)Cl]2-のクロロ配位子をアクア配位子として、アミニルラジカルなどの電子移動酸化剤を用いたプロトン共役電子移動酸化によりFe(V)-オキソ錯体の合成を試みる。また、クロロ配位子をニトリル配位子に変換した後、PhIOやm-クロロ過安息香酸を酸化剤及び酸素源として用いることにより、Fe(V)-オキソ錯体の合成を試みる。予備的知見として、クロロ配位子のかわりに、溶媒であるブチロニトリルが配位したFe(III)錯体の単離と結晶構造解析に成功しており、配位性溶媒中でAgPF6などによってクロロ配位子を除去して溶媒分子が配位したFe(III)錯体を生成させ、その後PhIOやm-クロロ過安息香酸との反応を試みる。 3.H4DTTM配位子の2つのベンゼン環に置換基を導入し、鉄中心と配位子の酸化還元電位を調整し、Fe(V)-オキソ錯体の生成に最適な状況を策定する。 4.Fe(V)-オキソ錯体の合成(又は生成)が達成された後、その基質酸化反応における反応性を調べる。研究対象として、C-H結合の酸化反応及びオレフィン類のエポキシ化を想定している。C-H結合の酸化については、2次反応速度定数(k)の常用対数(logk)とC-H結合の結合解離エネルギー(BDE)との関係を明らかにする。一方、エポキシ化反応については、アルケン類の2重結合上の電子密度を制御して、オキソ配位子の求電子性もしくは求核性について明らかにする。また、エポキシ化反応におけるcis-trans立体選択性について調べる。これらの研究を通じて、Fe(V)-オキソ錯体の反応性を明らかにする。
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[Presentation] A Series of Ring-Fused Porphyrins2014
Author(s)
Tomoya Ishizuka, Yuta Saegusa, Takahiko Kojima
Organizer
International Symposium on the Syntehsis and Application of Curved Organic π-Molecules and Materials(CURO-π)
Place of Presentation
京都大学黄檗プラザ(京都府)
Year and Date
2014-10-20 – 2014-10-20
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[Presentation] A Series of Ring-Fused Porphyrins2014
Author(s)
Tomoya Ishizuka, Yuta Saegusa, Takahiko Kojima
Organizer
Eighth International Conference on Porphyrins and Phthalocyanines (ICPP-8)
Place of Presentation
Istanbul Luetfi Kirdar Convention and Exhibition Centre (Istanbul, Turkey)
Year and Date
2014-06-24 – 2014-06-24
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