2014 Fiscal Year Research-status Report
非対称型配位不飽和二核原料を用いた錯体合成-速度論支配による新平面多核錯体形成
Project/Area Number |
26620040
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小坂田 耕太郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (00152455)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 二核錯体 / パラジウム / ケイ素配位子 / 金錯体 / 有機シラン |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスフィン配位子をそれぞれ1個および2個もつ金属中心がシリレン架橋した二核パラジウム錯体、二核白金錯体を合成、単離することに成功した。この錯体は非対称構造を有する一方で、二つの金属の配位飽和度が異なり、配位不飽和で反応性の高い14電子金属中心を一つ有する分子構造を持つことが、単結晶X線構造解析の結果から明らかになった。さらに理論計算による解析を行ったところ、配位不飽和な金属の周辺がホスフィン配位子の炭素―水素結合による弱い相互作用によってのみおおわれており、潜在的に高い反応性を有することが明らかになった。このような配位不飽和な非対称二核パラジウム、白金錯体の合成及び構造解析例はなく、本研究で得られた錯体の反応性に期待された。 白金二核錯体にジエンを加えたところ、ホスフィン配位子1個が脱離して対称構造をもつジエン橋かけ錯体に変化した。これらの錯体にさらに末端アセチレンを加えたところ、アセチレンが白金-ケイ素結合に挿入して環化したシラプラチナシクロヘキサジエン化合物が生成し、これを単結晶X線結晶構造解析を用いてその結合パラメーターを明らかにすることができた。シラプラチナシクロヘキサジエンは白金-炭素結合がカップリング反応をおこすことによってシロールを生成することが期待されるが、熱反応によっても変化がみられなかった。 パラジウム二核錯体は反応性が高く、熱力学的に安定な化合物へと変換できると考えて熱反応を行った。その結果、少量ではあるが、平面四核錯体を生成することがわかった。これは本研究の非対称二核錯体が多核錯体の良好な原料になりうることを示唆する事実ということができる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で用いる非対称配位不飽和二核パラジウム錯体は報告例がなく、かつ高い反応性をもつため、実際に合成が可能であるかどうか不明であった。しかし、研究期間の初年度において、上記錯体の高収率合成、構造解析に成功した。さらに、パラジウム錯体からの平面四核錯体の生成についても予備的な実験を行い、低収率ながら目的生成物の単離に成功した。これらの成果は当初予想していた研究のペースを大きく上回って得られたものであり、計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究で得られた非対称配位不飽和二核パラジウム錯体を用いて、多彩な多核パラジウム錯体およびパラジウム-金、パラジウムー白金錯体の合成を積極的に行う。多彩な条件の下で検討を行い、多核パラジウム錯体の合成を行うことによって、本研究の主旨とする非対称二核パラジウム錯体の多核錯体合成原料としての有用性、一般性を明らかにする。最終的には現在得られている平面四核錯体生成反応をさらに大きな平面クラスター錯体の生成へと展開する。
|