2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620041
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉沢 道人 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (70372399)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属 / 芳香環 / 分子カプセル / 重合開始剤 / ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分子カプセルに重合開始剤を内包することで、高い安定性と利便性を兼ね備えた機能性試薬を開発することである。その戦略として、多環芳香族骨格で囲まれたナノ空間を有する金属架橋カプセルに汎用的な光重合開始剤を内包することで、その光に対する安定性を高めるとともに、外部刺激に応答した開始剤の放出により、高効率な重合反応を達成する。すなわち、分子カプセルを活用した新重合開始剤を作製する。以下に本年度の研究成果の概略を述べる。 1.光ラジカル重合開始剤の内包と安定化:アントラセン環を含む湾曲型の有機配位子と金属イオンから成る金属架橋カプセルを利用して、光ラジカル重合開始剤AIBNの内包と光安定化を調査した。また、開始剤の内包状態を解明するため、詳細なNMRや結晶構造解析を行った。その結果、(1)NMR、ESI-TOF MS、X線結晶構造解析により、金属架橋カプセルには1分子のAIBNを定量的に内包することが明らかになった。また、(2)金属架橋カプセルに内包された1分子のAIBNは紫外光照射により、10時間以上も安定に存在することが示唆された。さらに、嵩高いAIBN誘導体は内包されることで、光および熱的な安定化に成功した。 2.外部刺激による開始剤の放出と重合反応:カプセルに内包されたラジカル重合開始剤を有効に活用するため、外部刺激による開始剤の放出の予備調査を行った。その結果、有機溶媒の添加により、AIBNが室温でカプセル内から放出されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究課題として計画していた(1)光ラジカル重合開始剤の内包と安定化と(2)外部刺激による開始剤の放出を達成し、狙いとする結果が得られた。特に注目すべき成果として、金属架橋カプセルに1分子のAIBNが定量的に内包されることが、NMR、ESI-TOF MS、X線結晶構造解析により明らかになった。また、AIBNは金属架橋カプセルに内包されることで、紫外光照射に対して10時間以上も安定に存在することが明らかになった。さらに、来年度の研究課題の予備調査を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に得られた新しい知見を基に、外部刺激によるラジカル開始剤の放出と重合反応を達成する。種々のモノマーを利用して、カプセル化ラジカル開始剤を利用したポリマー合成を検討する。また、その重合度や分子量分散を明らかにし、ポリマー材料としての物性を調査する。さらに、他の不安定化合物の内包による安定化についても探索する。
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Causes of Carryover |
今年度は小スケールでの実験を中心に基礎研究を行ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の結果を基に、次年度は大スケールでの合成実験とその化合物を使った様々な分析機器による精密物性解析を行う。残額は、試薬の購入費および装置の消耗品、学会参加費に充てる。
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