2014 Fiscal Year Research-status Report
直接合成による階層的金属錯体メゾ空間の構築と構造解析
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26620049
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大場 正昭 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00284480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金属錯体 / 脂質 / 膜チャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、柔軟かつ異方的なメゾスケール空間を提供するリポソームに、多様な機能を示す金属錯体を合理的に組み込んだ「階層的金属錯体メゾ空間」の構築と構造の評価を推進する。本年度は、リポソームを基盤として階層的金属錯体メゾ空間を制御形成するために、(1) リポソーム内水相における金属錯体の直接合成、(2) 階層的金属錯体集積体の構造解析の基盤技術の確立、を推進した。 (1) リポソーム内水相における金属錯体の直接合成 チャネル形成型抗生物質であるアンフォテリシンB (AmB) によりリポソーム上にイオンチャンネルを形成し、内水相において金属錯体を直接合成する手法の開発に成功した。この手法は、①凍結法による配位子の内包、② AmB によるチャネル形成、③ 金属イオン添加、④ イオン透過による錯形成、の4つのプロセスからなる。本手法を利用して、リポソーム内水相にプルシアンブルー (PB@Lipo) および Tb 配位高分子(Tb@Lipo)の合成に成功した。PB@Lipo とバルク合成した PB のセシウム吸着能を比較したところ、リポソームにより粒子の凝集が防がれた結果、PB@Lipo はバルクの5倍以上の吸着能がを示した。Tb@Lipo では、アニオンに応じて発光強度が変化するアニオンセンシングに成功した。 (2) 階層的金属錯体集積体の構造評価 共焦点レーザー顕微鏡および TEM を用いて、化合物を直接観察した。Tb@Lipo では、Tb の蛍光によるリポソーム内水相の発光から、Tb 配位高分子の直接合成が確認された。また、PB@Lipo と Tb@Lipo の TEM 観察では、どちらにおいても 5-10 nm 程度のナノ粒子の形成が確認され、粉末X線回折からそれぞれの化合物の合成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の各項目は、ほぼ予定通りに進展している。特に(1) リポソーム内水相における金属錯体の直接合成においては、計画よりも早期に抗生物質を用いた新しい合成法の開発に成功し、今後の合成展開の基盤を確立することができた。また、内水相に金属錯体を組み込んだリポソームの機能評価においては、バルク合成したサンプルを上回るイオン吸着能を示した点は、当初の計画以上に進展している。 (2) の階層的金属錯体集積体の構造評価では、リポソーム内水相における金属錯体ナノ結晶の形成を確認できた。解像度の問題から、本年度は放射光ナノビームX線蛍光分析を見送った。装置の都合で常温の TEM 測定しかできなかったため、リポソームの形状の変化が起きてしまったが、ナノ結晶自体の評価は十分にできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を基に、来年度も1) リポソーム内水相における金属錯体の直接合成、(2) 階層的金属錯体集積体の構造解析の基盤技術の確立、を推進する。 (1) では、開発した直接合成法を応用して、多様な機能性金属錯体の内水相に導入していく。さらに、外水相への機能性金属錯体の直接組込み法を開発し、リポソームを基盤とする階層的金属錯体メゾ空間の構築を推進する。また、膜チャネル分子である AmB 自体を修飾することでイオンチャネル機能の制御を試みる。外表面の金属錯体および膜チャネルの機能と内水相の機能性金属錯体の機能を連動させることで、バルク化合物とは異なる、高度な機能の発現を目指す。 (2) では、cryoTEM の測定をすることで、リポソームの形状を保持したまま、各機能性金属錯体の組込みを評価する。また、放射光を用いて、内水相で形成したナノ粒子の精密な評価を進める。共焦点レーザー顕微鏡観測の利便性を上げるため、リポソームのサイズを大きくしたジャイアントベシクルの利用も検討する。
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Causes of Carryover |
化合物の合成が計画以上に順調に進んだため、試薬代等の消耗品の支出を抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度には、本年度の成果を基に新たな化合物合成を展開するため、繰り越した金額は全て試薬代に充当する。
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Research Products
(11 results)