2014 Fiscal Year Research-status Report
水素貯蔵型ジアミン系配位子を含む軽金属ハイブリッド型水素キャリアの精密設計
Project/Area Number |
26620050
|
Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
張 浩徹 中央大学, 理工学部, 教授 (60335198)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 剛 中央大学, 理工学部, 助教 (40564109)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 水素 / 軽金属 / フェニレンジアミン / アルカリ金属 / アルカリ土類金属 / 光水素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、非貴金属(Li+, Na+, Mg2+, Ca2+)とH+及び電子を貯蔵できるπ系ジアミン配位子を含む、「水素貯蔵型ジアミン系配位子を含む軽金属ハイブリッド型水素キャリアの精密設計」を目的としている。初年度には、軽金属/水素貯蔵型配位子ハイブリッド錯体の合成を中心に研究を展開した。Mn+ (Mn+ = Li+, Na+, Mg2+, Ca2+; A = ClO4, BF4)と三等量のopdaをTHF中でそれぞれ混合し、得られた溶液を乾固することによりそれぞれ白色固体を得た。また、[Li3(opda)2(ClO4)(H2O)6](ClO4)2(opda)6と[Ca(opda)3(ClO4)2]をそれぞれ無色単結晶として得た。得られた生成物から、錯形成に中心金属の電荷/半径比が重要であり、Naはこれが低いため錯形成しないことが明らかとなった。溶液中における初期状態を明らかにすべく、NMRスペクトルを系統的に測定したところ、用いる溶媒及び金属種に依存し、opdaのフェニルプロトンとアミンプロトンのピークに変化が見られた。特にBF4塩はClO4塩と比べピークのシフトが大きくなる傾向があると共に、溶存水分子とのプロトン交換及び水素結合の存在も明らかとなった。opdaと相互作用しないNa+の添加ではopdaのみの場合と発生量に差が見られなかった。一方、錯形成が示唆されるLi+, Mg2+, Ca2+を添加することにより水素発生量が増加することが明らかとなった。その水素発生量はC/Rと相関を示すことから、opdaと金属種の相互作用が水素発生に有利に働いていることが示唆される。最後にCa錯体について触媒反応を検討したところ、ハイドロキノンの添加により水素発生量が大幅に増加し、既報と鉄錯体と類似した触媒的水素発生能を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はアルカリ及びアルカリ土類金属とopdaの錯形成反応及び生成物の同定を中心に研究を展開することを目的とし、Li, Na, Mg,Caについて系統的に研究を展開した。Na以外の金属の錯形成能を実証すると共に、Mg以外の錯体については単結晶構造解析により錯体の構造を明らかにすることができた。更に光水素発生反応と初期状態の相関を明らかにすべく、溶液中における錯体の状態を明らかとし、opdaとアニオン及び水分子とのプロトン交換及び水素結合が存在することを初めて明らかにした。 続いて初期状態と光水素発生能を明らかにすべく、光照射実験をTHF中で行ったところ、Na以外の金属において光水素発生能の向上がみられ、錯形成反応による効果を確認できた。また溶媒依存性として、CH3CNやジエチルエーテル中における光水素発生実験を試みたところ水素発生量に大幅な減少が見られ、溶媒分子の重要性も確認できた。また水素発生効率を向上すべく複生成物の同定を行ったところ、THF中において光水素発生後にベンズイミダゾール誘導体が形成されていることも新たに明らかとした。これにより競合反応の存在が示唆されたため、これらを抑制するための指針も得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度には、初年度に創成した錯体群の(1)熱的及び(2)光誘起H2発生能を明らかにし、高効率水素発生に向けた物理化学的因子の最適化を遂行する。 (1)熱的H2発生:既知の光水素放出に加え、加熱によりエントロピー駆動で水素放出が生じる可能性がある。熱的水素発生に対するバリアを軽減するためには還元体の安定性を降下する必要があるが、配位子上への電子供与基の導入等により最適化する。また、溶液・固体・イオン液体の三相における熱的プロセスを熱重量分析やXRD, GC, IR測定により追跡する。 (2)光誘起H2発生:本系の光水素発生は、パイパイ*励起状態からのパイシグマ*状態への緩和によりN-H結合が活性化される。金属イオンのサイズ、正電荷密度等は変化するため、系統的な実験により基底及び励起状態を含む金属種-水素発生能相関を明らかにする。 (3)ハイブリッド型錯体に基づいた可逆的水素貯蔵を進める。熱及び光による水素発生により、配位子は酸化型へと酸化される。本研究でLi+, Na+, Mg2+, Ca2+に限定するのは、その軽量さとユビキタス性もさることながら、水素放出後に生成する酸化種の活性化を指向している点にある。dブロック金属においては、酸化型イミンへのd軌道からの逆供与により酸化体が安定化する。このことは配位子の還元とプロトン化を伴う水素の再貯蔵を困難にすることを意味する。一方、逆供与の寄与のないsブロック金属では、酸化種が活性化されることが期待される。本研究では、合成化学的に単離した各種レドックス異性体の溶液中でのH+/電子受容能並びにプロトン共役電子移動能を定量的に明らかにし、凝集相における水素吸蔵特性と相関付け、最適なレドックス異性体を見いだす。その後、(1)熱的(冷却)、(2)光、及び(3)圧力印加による水素の再貯蔵を試みる。
|
Causes of Carryover |
消耗品として計上した経費のうち、当初初年度に予定していたガラス器具類の購入を次年度に持ち越すことが可能であったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画通り、研究を遂行するために必要なガラス器具類の購入する。
|
Research Products
(16 results)
-
-
-
[Journal Article] Spontaneous Construction of Nanoneedles Using Ruthenium Complex-conjugated Porphyrins on Substrates2014
Author(s)
Togashi Takanari, Atsushi Izumi, Kon Hiroki, katsuhiko kanaizuka, Manabu Ishizaki, Ryosuke Miyake, Ho-Chol, Chang, Masaaki Haga, Masatomi Sakamoto, Masato Kurihara
-
Journal Title
Chem. Lett.
Volume: 43
Pages: 1201-1203
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-