2014 Fiscal Year Research-status Report
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26620063
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田原 一邦 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (40432463)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 固液界面 / 自己集合 / 走査型トンネル顕微鏡 / キラリティー / 分子認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は「不斉認識能を持つナノサイズの二次元空孔の構築」を目的として、新分子の合成とその固液界面でのSTM観測を行った。具体的には、長鎖アルコキシ基が置換したデヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)のアルコキシ鎖の2位の不斉炭素に官能基を導入した分子の合成を検討した。研究実施計画に記載した、C6側鎖の2位にフェニル基が置換した分子に関しては、側鎖ユニットの合成を終えた。引き続きDBA誘導体の合成を行う予定である。また、より合成の簡単なC6側鎖の2位にキラルなヒドロキシ基を有するDBA誘導体を新たに設計し、合成した。このヒドロキシ基を有するDBA誘導体の有機溶媒とグラファイト界面における自己集合についてSTMにより調査したところ、ハニカム構造が観察された。そのハニカム構造は、ホモキラルな二次元空孔によって構成されていることが分かった。ホモキラルな二次元空孔に対して、キラルなアミノヘリセンをゲスト分子として加えキラル分子の認識能について現在調査している。ところで、予想外の結果として、このキラルなヒドロキシ基を有するDBA誘導体が、固液界面において多孔性の積層膜を形成することが明らかとなった。これはヒドロキシ基間の水素結合相互作用に起因していると考えられる。多孔性の積層膜には、反応場や有機薄膜材料への用途が期待されるため、得られた知見は重要である。この結果を元にして、分子設計にフィードバックして積層膜の構造制御について検討する予定である。 キラルな二次元分子ネットワーク形成に関して本課題と関連する、実験的研究と理論研究に関する論文をそれぞれ2報発表した。また、二次元分子ネットワークの構造制御に関して関連する学会発表を4件行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、多孔性の二次元分子ネットワークのナノ空孔のキラリティーと化学的な環境の制御にもとづいて、不斉認識能を持つ二次元空孔を固体表面上に構築することを目的としている。 上記の目的に対して、初年度は新たなキラルな側鎖を持つデヒドロベンゾ[12]アヌレン誘導体を二つ設計しそれらの合成を検討した。その結果、不斉炭素にヒドロキシ基が置換した分子の合成を終えた。また、もう一方の不斉炭素にフェニル基が置換した分子については側鎖ユニットの合成を終えた。 合成したヒドロキシ基が置換した分子については、有機溶媒とグラファイトの界面において形成する単分子膜のSTM観測を行ったところ、ホモキラルなハニカム構造を形成することが分かった。現在このキラルなネットワークの空孔の分子認識能をキラルなアミノヘリセンをゲスト分子として調査しており、順調な進捗状況にある。また、予想外の結果として、この分子が積層膜を形成することが分かった。この点も今後の発展が期待される成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本課題はおおむね順調に進展している。今後、当初計画に従って研究を進めるとともに、新たに見つかった知見についてもより詳細な調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費に関して、STM観測や他の測定が本格化する次年度により多くの消耗品を必要とするため、繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した物品費を使用して、本課題をさらに推進する予定である。また、最終年度には多くの成果発表を行う予定である。
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