2014 Fiscal Year Research-status Report
ペロブスカイト太陽電池における界面のキャリア拡散と電子状態解析
Project/Area Number |
26620065
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小堀 康博 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00282038)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 太陽電池 / 電子スピン共鳴 / 無機・有機ハイブリッド / ペロブスカイト / 電荷分離 / 界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高速時間分解電子スピン共鳴システムを用い、無機・有機ハイブリッド太陽電池の初期光電変換過程において重要な役割を果たすペロブスカイト/酸化チタン多孔質層界面の光電荷分離過程を観測する。低温領域の束縛電荷分離状態の測定と共に、高温領域ではペロブスカイト層および正孔輸送層において高速なキャリア拡散・解離により生成する電子スピン分極とスピン緩和時間を定量化する。電子や正孔を伝達し輸送する不対電子軌道を特定し、電子-正孔対におけるキャリア拡散定数と、不対電子軌道の重なりや空間的広がりを正確に特徴付けることを目的としている。 九州工業大の早瀬修二教授らにより作成された正孔輸送層(Spiro-OMeTAD)/ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)/Porous TiO2基板について、極低温条件下において532 nmレーザー照射による時間分解電子スピン共鳴スペクトルを観測した。レーザー照射後直後より、低磁場領域側でヨウ素上に不対電子密度を持つことを示す複雑な超微細構造を持ったマイクロ波の放出信号と、高磁場側では三価のTi3+に帰属されるマイクロ波の吸収信号が観測された。ペロブスカイト層のヨウ素による超微細構造が得られたことから正孔はペロブスカイト層に存在し、Ti3+に帰属される信号により、電子はPorous TiO2に分布していることが明らかとなった。このことから、ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)/Porous TiO2界面にて光による電子-正孔の解離(電荷分離)が起こっていることが分かった。最近の山下ら(東大)の理論計算では、ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)価電子帯の電子密度分布がヨウ素の5p軌道上に広く存在することが報告されており、今回得られた正孔の不対電子密度をよく説明している。得られた電荷分離状態の寿命は20マイクロ秒以上と長寿命であることから得られた状態は深いトラップにある欠陥準位であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正孔輸送層(Spiro-OMeTAD)/ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)/Porous TiO2基板について、時間分解電子スピン共鳴スペクトルによる電荷分離状態の観測に成功し、さらに電子や正孔の位置、電子軌道分布、軌道準位についてある程度の特徴付けが進んでいるため本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、より結晶性を向上させ、粒径を制御したペロブスカイトのナノ粒子を作成する。光照射直後にペロブスカイト層の内部にて生じる電子-正孔解離のダイナミクスを直接観測する予定である。トラップ状態にある界面電荷分離状態における電子的相互作用の値と、キャリア拡散状態にある時の電子的相互作用の空間的広がりを比較検討することにより、太陽電池動作条件においてどのような電子状態(すなわちトラップ深さ)を持つキャリアが電気伝導に寄与するかを具体的に明らかにする。
|
Causes of Carryover |
太陽電池基板の作成に関わる材料費が当初予定額より少なかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年次以降のペロブスカイトナノ粒子作成に関わる費用に充てる。
|
Research Products
(26 results)