2015 Fiscal Year Research-status Report
多分岐高分子保護剤の構造・機能設計による特異的ナノ金属粒子触媒反応場の構築
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26620089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 英夫 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50159076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 磊 九州大学, 先導物質化学研究所, 研究員 (40637550) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金属ナノ粒子 / ハイパーブランチポリマー / アンモニウム塩 / 遷移金属 / 二相系触媒 / 水素化 / カウンターイオン交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,特殊構造高分子であるハイパーブランチポリスチレンアンモニウム塩を保護剤とした金属ナノ粒子触媒を開発し,そのアンモニウム塩,金属表面,水の3つの要素で活性,選択性を制御する「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説をもとに,高活性,高選択性ナノ粒子触媒の開発を目指している.研究のマイルストーンを,1.反応モデルの確立,2.金属元素の多様化,3.アンモニウム塩修飾コンセプトの確立と実証,とし,平成26年度に1において,水中反応での加速効果,2における金属の拡張(金,白金,パラジウムから,ロジウム,ルテニウム等8族から11族元素全般へ)に成功した.さらに,3にあたる,これらのアンモニウム塩のカウンターアニオンを,カルボキシレートやスルホネートへ拡張する変換反応を発見し,平成27年度にこれらの合成法を確立した. 以上を受けて,反応モデルから実用性ある有機合成反応への展開をおこない,平成26年度には,金属ナノ粒子が分散したハイパーブランチポリスチレンアンモニウム塩を用いるアルケンと芳香環の水素化反応の系統的研究をおこない.平成27年度には,とくに,金属として白金を用いて,芳香族ニトロ化合物の水素化反応を集中的に検討した.ニトロベンゼンのアニリンへの水素還元は,ニトロソベンゼン,フェニルヒドロキシアミンを経由する多段階反応であるが,まず,アンモニウム塩上のアルキル基と水素圧を適切に選択することにより,ヒドロキシアミンとアニリンの選択合成,アニリンの副生を伴わないクロロニトロベンゼンの合成,に成功した.26年度に水中でのケトンの水素化を達成したが,ケトンを初めとするカルボニル基を有するニトロ芳香族化合物の水素化では,ニトロ基の選択的還元が起こった.過去の報告よりも高い触媒活性と,液・液二相系触媒での繰り返し再利用実験にも成功し,効率的な水素化プロセスを達成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3つのマイルストーンは,この2年間で基盤となる成果は得られている.一方,本研究の最も挑戦的な課題である,「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説に基づき,アルケンや芳香環,ニトロ基の還元で,官能基選択性を含む多くの実験事実が集積し,有機合成反応として有用な触媒プロセスの構築に成功した.本年度,最も成果が出た点は,高効率的,高選択的な芳香族ニトロ化合物の水素化反応である.ハロゲン,カルボニル基等の官能基を有する芳香族ニトロ化合物を,ハイパーブランチポリスチレンアンモニウム塩で保護した白金ナノ粒子で,高い触媒効率と,アニリンとヒドロキシアミンの選択合成や,ニトロ基と他の還元を受けやすい官能基間の高い選択性を達成した.液・液二相系での触媒回収再利用にも成功している.この成果は,26年度にまとめた官能基を持つアルケンや芳香環の水素化反応と比較検討することにより,本研究の最も挑戦的な課題である,「相間移動ナノ粒子触媒反応場」を理解する上でも優れた成果である. 「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説の要素である,アンモニウム塩の両親媒性,ナノ粒子特有の高活性金属表面,水やアルコールのような水素結合を作りやすい溶媒中での,触媒と基質の相互作用,という点が,これまで開発してきたアルケンや芳香環,ニトロ基の水素化の活性や選択性の鍵となっていることは明らかである.一方で,仮説を端的に実証できる実験として,アンモニウム塩に不斉因子を導入して実施する不斉水素化や,光レドックス部位をもつアンモニウム塩を用いて当該部位が反応の鍵になる,という点を検討した.カウンターイオンに,前者は不斉スルホン酸を導入する,後者はキノンを持つスルホン酸を導入することで,触媒合成には成功した.これらを用いた反応について検討したが,現段階では再現性に問題があり,精密な条件設定が必要であるという結論に至った.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の展開方針は,芳香族ニトロ化合物のScopeとLimitationについて,活性と選択性に注目して,さらに実験を追加して,研究成果を体系的にまとめていくこと,ならびに,残る問題点である「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説を明確に示す実験的証拠を得る検討を実施する.の2点である.これまでの結果は,同じ水素化反応でありながら,ニトロ化合物の水素化が,アルケンや芳香環の水素化とは異なる反応機構で進行することは明らかである.平成28年度に,1年間延長する研究期間の間に,反応条件や,中心金属の違いによるアルケン(または芳香環)とニトロ基,ケトンとニトロ基,ケトンとアルケン(または芳香環)の間の官能基選択性に着目して,これらを実施する.一方,現在,再現性に難があるより直接的な「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説の証明となる,不斉合成等のアンモニウム塩の修飾と基質の二重活性化による特異的な反応性や選択性に関する検討もあわせて実施する.
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Causes of Carryover |
本研究の遂行途上で,多分岐高分子保護剤の構造を精密に制御し,また適切な反応媒体を用いることで,金属微粒子による触媒反応に対し,当初想定以上の幅広い反応性や再利用特性を付与することが可能であることが見出された.このため,高分子保護剤の構造・特性と,様々な金属微粒子による触媒機能との相関のさらなる精査が必要となったため,研究期間を延長する.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
芳香族ニトロ化合物のScopeとLimitationについて,活性と選択性に注目して,さらに実験を追加して,研究成果を体系的にまとめていくこと,ならびに,残る問題点である「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説を明確に示す実験的証拠を得る検討を実施する.の2点である.これまでの結果は,同じ水素化反応でありながら,ニトロ化合物の水素化が,アルケンや芳香環の水素化とは異なる反応機構で進行することは明らかである.反応条件や,中心金属の違いによるアルケン(または芳香環)とニトロ基,ケトンとニトロ基,ケトンとアルケン(または芳香環)の間の官能基選択性に着目して,これらを実施する.より直接的な「相間移動ナノ粒子触媒反応場」仮説の証明となる,不斉合成等のアンモニウム塩の修飾と基質の二重活性化による特異的な反応性や選択性に関する検討もあわせて実施する.経費は試薬,溶媒等の消耗品を予定している.
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Research Products
(2 results)