2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620090
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
魚住 泰広 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 教授 (90201954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 元素戦略 / ユビキタス金属 / 鉄触媒 / 銅触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有用な触媒的分子変換工程の多くはレアメタル遷移金属触媒によって達成されてきた。近年レアメタルの枯渇性を考慮し,ユビキタス遷移金属への転換が計られつつある。本研究提案では両親媒性高分子担体内でユビキタス金属ナノ粒子を発生・固定化することで同ナノ粒子を安定化させ,その触媒機能を探索する。 平成26年度において我々の独創である両親媒性ポリスチレン-ポリエチレングリコール(PS-PEG)共重合体担持をユビキタス金属に適用することで,従来不安定で実践的利用が困難であったFe, Cuナノ粒子を安定に取り扱う手法を確立しつつある。また,PS-PEGに加え,ポリアクリロアミド系の配位性高分子との錯体形成~ナノ粒子発生も合わせて検証した。 得られた高分子担持ナノ粒子の触媒機能をスチレン類の水素化,アルコールの水中酸素酸化,さらにはカルボニル化合物の水素化還元へと適用可能であることが見いだされ,次年度以降の連続フロー反応システム開発の有用知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は両親媒性ポリスチレン-ポリエチレングリコール共重合体を担体とすることで種々の遷移金属錯体およびPd, Ptのナノ粒子を高分子マトリクス内に固定化してきた。その過程で,高分子マトリクスに包埋することでナノ粒子のアグリゲーション(融合化・集合化)を抑制し,これらナノ粒子を安定に取り扱えることを確認してきた。 平成26年度において我々の独創である両親媒性ポリスチレン-ポリエチレングリコール共重合体担持をユビキタス金属に適用することで,従来不安定で実践的利用が困難であったFe, Cuナノ粒子を安定に取り扱う手法を確立しつつある。すなわちナノ金属粒子の安定化と水中触媒機能獲得に有効な両親媒性高分子PS-PEGを担体としてマトリクス内でのFe錯体調製,Cu錯体調製を各々検討し,さらに高分子マトリクス内でそれら錯体からのナノ金属粒子の発生手法を確立した。また, PS-PEGに加え,ポリアクリロアミド系の配位性高分子との錯体形成~ナノ粒子発生も合わせて検証した。調製した高分子担持錯体およびナノ粒子の価数・配位数,粒径分布などはTEM, XRD等で精査した。実験検討は申請者所属研究機関の研究員および大学院生によって実施し,理研協力研究者は精密な金属元素分析(ICP-MS)およびSPring8利用によるEXAFS測定などを担当した。 得られた高分子担持ナノ粒子の触媒機能を通常のフラスコ反応によって初期検討する。反応としてはスチレン類の水中水素化,アルコールの水中酸素酸化,さらにはカルボニル化合物の連続フロー水素化還元へと適用可能であることが見いだされた。反応中の金属種の溶出についてもppbオーダー以下であることを確認しており,次年度以降の連続フロー反応システム開発の有用知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本提案課題で実現する水中機能性高分子担持ユビキタス遷移金属ナノ触媒を,サイズ調整やハンドリングが容易な高分子ビーズとしてカラム型ステンレスカートシッジに充填することで連続フロー反応システムへと展開できたならば,実践的化学プロセスへの応用展開上の優位性は極めて高い。最終的には申請者の独自技術であるマイクロ流路内での高分子担持ナノ金属粒子触媒調製と,同流路デバイスを利用する高速フロー反応に繋げる。特に連続フロー反応系では生成物はフローによって反応系外に溶出させられるため,触媒機能の生成物阻害を避けることができる。なお,水(特に純水)は疎水性有機物を充分に溶解できることを既に確認している。 平成27年度には前年度に検討した触媒調製,およびその触媒反応を連続フロー反応系に展開する。アルコール類の酸素酸化については,すでに市販のポンプ類を用いて反応ガス導入が可能な反応システムを準備完了しており,また水素化反応への適用も検証済みである。スチレン類の水素化触媒システム確立後は不活性2重結合やカルボニル化合物の水素化の連続フロー水素化還元を確立し触媒の適用範囲を拡充する。 連続フロー反応システムとして気体ガス反応剤導入型フロー反応装置あるいはY字型流路デバイスの利用を計画している。申請者が独自に開発した技術である(JACS, 2006)層流界面触媒膜調製法を利用することで特にユビキタス元素触媒による酸化還元型反応(例えばフェノール類の酸化的2量化)の連続フロー触媒システムを検討する。
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Research Products
(15 results)