2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620108
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277822)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子交換反応 / 電荷輸送 / 整流 / 湿式トランジスタ / 有機デバイス / ゲル接合 / 高密度レドックスポリマー / 交差反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機湿式ダイオードやトランジスタの特性発現に適した電位をもつ高密度レドックスポリマーを合成し、電子交換に基づく導電物質としての基本的性質を明らかにした。これらの接合界面における交差反応を介した整流特性と、平衡電位の制御に基づくトランジスタ特性を、実デバイスを試作して実証した。固体/ポリマーおよびポリマー/ポリマー接合界面の微細構造を、平滑電極での積層によるヘテロ接合膜、ラテラル電荷伝播を引き出すくし型電極への成膜、ブロック共重合体のミクロ相分離膜などを駆使して制御し、拡散層厚みとの相関を解明した。レドックス電位による閾値電圧の制御、逆電子移動由来の残余電流を抑止できる電位ギャップの解明、平衡電位の関数としての電荷拡散係数の測定を経て、斬新な湿式デバイスとして具体化できつつある。以下に具体的成果を述べる。 1) 高密度レドックスポリマーの設計と合成:高い電荷注入効率が期待できる2電子レドックス席(キノン類)および1電子席(ニトロキシド、ニトロニルニトロキシド、ガルビノキシルなど安定ラジカル種)を側鎖として繰り返しユニット当り高密度に有するポリマーを、共重合体を含め従来知見も援用しながら合成し、積層膜に適した高重合度と適度な溶解性を両立させた構造を絞り込んだ。電極表面での可逆的な電子授受に基づき、ポリマー固体中で密集したレドックス席への効率高い電荷注入を実証した。特に、類例の少ない高密度n型ポリマーの具体例を拡張し、整流性の普遍化に不可欠な卑な電位で電子授受を行うポリマー層を創出した。 2) 電子交換に基づく導電現象の確立:拡散勾配に沿った電荷輸送の支配因子と考えられる物質移動過程を、EQCMや顕微解析に基づく共重合体の相分離構造制御を手段として効率化する切り口から、膜内の自己電子交換反応とポリマー界面での交差反応に関わる基礎知見を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画に沿った展開により、当初の想定を超えた成果が得られ、第2年度の計画を一部前倒しした展開が可能となっている。具体的には、キノン類などの可逆2電子席や、ニトロキシドに代表される1電子レドックスを示す安定ラジカル種をペンダント置換基として繰返し単位当りに有する非共役系ポリマーを斬新な導電物質と捉え、高密度レドックスポリマーと称しているこれらのポリマーを用いた電気化学素子を実際に試作・動作実証し、分子レベルでの電荷輸送制御に関する基礎知見を集積している。 この結果、高密度レドックスポリマーによる整流性の実現、トランジスタの試作・動作実証に踏み込む成果が得られ、さらに、反応選択性に基づく信号増幅にも挑戦することが可能となっている。電子交換に立脚した斬新な有機デバイスを広く提案できる基礎が確立され、生体内の代謝や情報処理を担う分子システムに触発された画期的な湿式デバイスなどとして、第2年度はより挑戦的な課題に取り組む手がかりも得られており、着実な成果集積が期待できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 交差反応を介した整流性の普遍化:レドックス電位が顕著に異なる2種の高密度ポリマーを用いた積層素子を作製し、濃度勾配に駆動される電荷輸送にヘテロ接合を導入して異方性をもたせた設計により、接合面での交差反応に基づく整流性が発現することを一般性高い知見として確立する。究極の密度でかつ高速に電荷を整流する湿式ダイオードとして創出する。整流性を示さないポリマー単層膜を基準として、電位差と閾値の相関を解明する。これらを基に、閾値を分子設計でき、集電体を選ばず、反応の方向が電位差に支配され逆バイアス印加時の残余電流がゼロに近い画期的デバイスを創出する。 2) 電位制御に基づくトランジスタ特性の実証:交換反応による輸送電荷の流束は、交換速度とキャリヤ濃度の積で表され、酸化・還元体が同数となるレドックス電位において最大になることを3極デバイスで実証する。ポリマー膜のインピーダンス特性解析から、拡散抵抗が平衡電位の関数となることを予備的に実証しており、これを用いて平衡電位をゲート電圧とするトランジスタ特性を導出する。高密度レドックスポリマー中の電荷拡散が高速で行われることに基づき、ゲート電圧に素早く追随して電流応答する、従来にない湿式トランジスタを構成する。平衡電位近傍で大きな電流変化が期待できることに基づき、微弱信号入力を増幅応答できる画期的な湿式デバイスとして提示する。
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Causes of Carryover |
湿式電荷輸送層を形成するポリマーの合成が当初の計画以上に順調に進展したため、計画に見込んだ合成試薬費の一部を節約できたので次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(最終年度)は着実な成果集積に向け、繰り越された経費を主にポリマー及びデバイスのキャラクタリゼーションに用する消耗品費(サンプル管、電極など)および分析依頼費に充当する計画である。
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Research Products
(5 results)