2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞とのデジタルな相互作用を実現する新奇ナノ粒子の創製方法
Project/Area Number |
26620125
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中西 淳 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (60360608)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノ粒子 / がん / パッチー / 上皮成長因子 / 分子込み合い / 自己組織化 / ポリエチレングリコール |
Outline of Annual Research Achievements |
生体組織の中からがん細胞を検出するように,複数種の細胞の中から特定細胞を"染め"分けることは診断・治療において重要である。本研究では,標的細胞の表層に高発現する受容体と相互作用するリガンドが斑に配列したパッチーな表面構造を有する新奇ナノ粒子を開発し,その表面状態(パッチー性,分子込み合い)を調節することで細胞種特異的なデジタル標識を実現することを目的としている。本年度は,パッチーナノ粒子の分子込み合いに応じて細胞との相互作用がどのように変化するか基礎検討を行った。まず,金ナノ粒子の表面に光解離性のポリエチレングリコール(PEG)と上皮成長因子(EGF)を順次修飾した。使用したPEGは分子量5000で,EGF分子よりも大きな水和半径を有しているため,この順序で表面修飾を施せばPEGの隙間にEGFが斑状(パッチー)に固定化されると予想される。さらにこの粒子表面設計では,光照射によってPEGを徐々に除去することで,ナノ粒子表面のEGFの分子込み合いを変化させることが可能であることがもう一つの特徴である。開発したナノ粒子をがん細胞であるHeLa細胞に作用させたところ,リン酸化酵素ERKが活性化されていることがELISA測定から分かった。一方で,あらかじめ光照射を行ってPEGを間引きしたナノ粒子を細胞に作用させた場合は,よりERKの活性が増大していた。以上から,パッチーナノ粒子表面の分子込み合いをコントロールすることでナノ粒子と細胞との相互作用が調節できることが明らかになった。本研究内容をまとめ論文に投稿した。今後,EGF受容体の発現量の異なる細胞間でどのような違いが生まれるか検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はパッチーナノ粒子のパッチー性を調節する新規手法の開発から着手する予定であったが,パッチーナノ粒子が表面状態に応じて細胞との相互作用が変化することを確認することも本研究戦略の重要な必要条件と考え,予定を変更してそちらの研究からスタートした。それが奏功して,パッチーナノ粒子の分子込み合いを調節することで細胞との相互作用が変化することが確認でき,初年度を終了した時点で本戦略の前提条件の一つがクリアになった。また,細胞側の評価方法が確立できたことも重要なプログレスである。以上を考えれば,プロジェクトの全容から考えれば概ね順調に進んでいると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
パッチーナノ粒子のパッチー性を調節する新規手法に着手する。DNAの鎖交換反応とナノ粒子の自己組織化を原理に,ナノ粒子表面上に粒径の異なるナノ粒子の最密充填構造を形成し,そのことをフィールドフローフラクショネーション法や電顕を用いて確認する。そ後に初年度と同様にEGFをナノ粒子上に固定化して,パッチー性や細胞種による応答性の違いを調べていく。
|