2015 Fiscal Year Research-status Report
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26620126
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
外山 滋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 研究室長 (50360681)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生体材料 / 生体電極 / 電気化学 / 生体信号 / センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
・生体内で分解可能な電極、センサについては内外で他にも研究例は様々にあるが、生体内に入れた時点で分解がスタートするものばかりである。本研究は、分解のスタート時点をコントロールできる様にすることを目指している。前年度における電極構造の検討の結果、電極先端部での生体電位を測定できる様にするためには、基本的には外チューブと内チューブからなる構造が必要であるものと考えられた。このうち、外チューブは生体内で酵素分解を受けにくいセルロースでなくてはならず、内チューブは材質としてより自由度があるものの絶縁性を有する必要がある。 ・外チューブであるセルロースチューブについては、特殊構造のノズルを作りセルロース溶解液を水溶液中で押し出すことで作製を試みた。溶解液が水溶液に接触すると溶媒が水中に分散するので固化するという原理であるが、これにより連続的にチューブを作製できる様になった。その結果、様々な直径(サブmmから数mmの範囲)で数十cmの均質な物が加工できる様になった。 ・内チューブについてはまずシリコーン微粒子をセルロース中に分散させた膜について検討した。この方法であれば内外のチューブをセルラーゼで同時に分解可能であると考えた。しかし、微粒子の含有率を調整しても絶縁性を付与することは困難であった。そこで、酵素分解可能な他のポリマーを使用することとした。この方法であれば、通常は外チューブによって電極内への生体酵素の侵入がブロックされるため、内チューブが容易に分解されることは無いと考えた。この様なポリマーとしてポリ乳酸が最適であるが、その分解酵素を入手することが困難であったため、ポリ-ε-カプロラクタムを検討した。しかし、同ポリマーは機械的強度が脆弱であったため、今後さらにコポリマーを含めた他の生分解性ポリマーを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セルロースチューブの作製技術としては独自の方法が確立できた。しかし、これのみでは本研究の目的は達成できない。特に電極の別のパーツである絶縁性の酵素分解性チューブの作製に時間が掛かっている。コンセプトとしては問題無いと考えているが、最適な材料の組み合わせ(生分解性ポリマーと酵素)について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
・絶縁性酵素分解性チューブの開発:既知の酵素分解性ポリマーと酵素を利用する。文献上の研究例は多いが、入手可能かどうかが問題である。最終年度ということもあり急がれるので、謝金を利用するなどして引き続き情報収集に努める。加工法については何等かの方法で液状化ができるものであれば特に問題は無いものと考えている。 ・電極内部への酵素の供給手段の開発:当初予定では、電極の一部を生体外に出しておき、そこから酵素溶液を供給することとしていたが(生体外に電極出力を取り出すためには導線が必要であり、酵素溶液チューブと共通化する)、完全埋め込み型電極を考えればこの方法は適切ではない。そこで、電極内部に酵素溶液を貯蔵し、外部刺激により放出する方法を新たに検討する。外部刺激としては、電気刺激、機械的圧迫、超音波など様々に考えられるが、可能な限り偶発的な放出を抑制することが望ましいため、電気刺激法を優先的に検討する。 ・簡易生体モデルの構築と評価試験:基本的には水溶性ゲルでモデルを構築することとするが、ゲル内部で電位勾配を形成できる様にする。これにより、電極先端部で適切に電位測定ができているかどうかを評価することが可能になる。なお、水溶性ゲルであれば分解の様子も可視化できるものと思われる。
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Causes of Carryover |
備品の購入費をこれまで抑制してきたことが大きな要因である。顕微鏡観察に予定したいた治具は簡易品の購入と自分自身による加工で済ませ、顕微鏡画像の処理にはフリーウェアを利用し、またノズルの加工なども外注によらず自分自身で行ったため安価であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、電極の部品となる生分解性ポリマーや酵素、その他の試薬類のこれまで以上の購入が見込まれる。また、電極の加工・評価に必要な部品等の経費が見込まれる。また、これまでは抑制していたが研究を効率的に進めるために情報収集や実験の補助を依頼するための人件費が必要である。その他、学会発表、論文作製費などに必要となる経費に使用する予定である。
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