2014 Fiscal Year Research-status Report
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26620131
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光クロスリンク / DNA鎖置換反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA分子のプログラミング能に着目し、これまでDNA分子自体に基本演算素子(AND, OR, NOT 等)が実装できることが報告されている。一方で、さらに高度な情報処理を実現するには,過去の入力情報を記憶して,その記憶と現在の入力にもとづいて次の出力を決定する計算機構(状態遷移機械)を実現することが必須であるが、これまで報告された試験管内の化学反応回路は,ほとんどが記憶能を持たない論理回路であった。一方で研究代表者が開発した光クロスリンク反応は秒単位で鋳型DNAに対して光架橋する系であるが、秒単位で操作できる高速性が特徴であり、最近、この高速光架橋反応を組み込むことで、光照射によりDNAの鎖置換反応が数十倍加速することを見出した。平成26年度は、光によって高速化された鎖置換反応を多段階に組み合わせることで周辺環境(単位時間辺りに光照射した回数)を記憶できるのではと着想し、周辺環境(条件の違い)を差別化する為の超高速で核酸を光架橋する新規素子を開発を行った。そこで、従来のリボース骨格ではなくアミノ酸骨格(D-トレオニノール骨格)に置換したシアノビニルカルバゾール誘導体(cnvD)を合成した。従来の素子であるcnvKと比較して8倍程度光架橋反応を高速化できることを見い出した。またcnvDを用いてDNA鎖置換反応を行い、加速効果を評価した。また鎖置換反応を2段階組み込ませたANDゲートを用いて評価を行い、50倍程度光照射時にDNA鎖置換反応が高速化されることも見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が開発済みの人工塩基3-cyanovinylcarbazole(CNVK)をDNA中に埋め込む際に鋳型核酸上に埋め込むものと、鎖置換するための鎖に埋め込むもの2種類の系を準備し、また最初のDNA2本鎖セットにおいて光架橋しない様にターゲットサイトにはピリミジン塩基ではなくアデニン塩基を配置し、置換する側にはチミン塩基を入れておき、T―Tミスマッチとなる様にした系においてDNA鎖置換反応解析を行った。その結果、光照射によって鎖置換が進行し、しかもコントロールとなる鎖置換反応よりも20倍以上加速することを見出した。光によって高速化された鎖置換反応を多段階に組み合わせることで周辺環境(単位時間辺りに光照射した回数)を記憶できるのではと着想し、周辺環境(条件の違い)を差別化することに成功した。またDNA鎖置換反応の高速化には光架橋素子の架橋速度能が重要であることから、周辺環境(条件の違い)を差別化する為の超高速光架橋素子の開発を行った。そこで、従来のリボース骨格ではなくアミノ酸骨格(D-トレオニノール骨格)に置換したシアノビニルカルバゾール誘導体(cnvD)を合成した。従来の素子であるcnvKと比較して8倍程度光架橋反応を高速化できることを見い出した。以上のことから、周辺環境を差別化する為の反応系だけでなく、新しい素子の開発にも成功していることから当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、連続したDNA鎖交換反応系の構築と評価を行い、測定を行う単位時間の設定、光照射時間及び照射タイミングの設定も含めて、照射した回数を記憶するための最適条件を探査する。光を照射した回数については3回照射をMaxとして考え、それに応じて3つの光クロスリンカーを組込んだ鋳型鎖を準備する。一度光架橋が起きると鎖置換によって新たなのりしろ(toehold)が生じるシステムを直列的に配置させることで、光照射した回数に応じて回数分光架橋される系を考えている。 平成26年度に得られたDNA鎖置換反応速度に関して得られている各種パラメーター(toehold、鎖長、温度、照射時間)をもとに、シミュレーションによって実験結果を再現できる様にする。これらシミュレーション結果を活用しながら、連続したDNA鎖置換反応に用いるDNA配列を効率的に設計しながら実験を進めることで、最終的には単位時間辺り光を照射した回数を記憶するDNA分子システムに向けた最適条件を見出そうと計画している。評価は変性PAGE解析にて行う。26年度で得られた実験データーをもとに、単純な近似でシミュレーションを行いながら、配列、鎖長、温度などの設計を行い、実験により評価を行う。光開裂させることで熱力学的に最安定構造へと再誘導可能かどうかも変性PAGE解析を行い、リサイクル可能なシステムかどうか評価を行う。 また、変性PAGE解析で光を照射した回数を記憶するDNA分子システムの構築について裏付けがとれた場合、開発した分子システムの可視化を行うものとする。蛍光プローブと消光プローブを適切に配置することで光を照射した回数を色の変化で目視できる様に判別容易な分子系の設計と評価を行う。
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Causes of Carryover |
超高速光架橋素子開発において、当初、様々なリンカーを用いたシアノビニルカルバゾール類縁体を設計し合成予定であったが、D-トレオニノールをリンカーとして有するシアノビニルカルバゾール(cnvD)の合成に成功し、その反応性が8倍以上の高い反応性を示すという予想以上の結果が得られた。そのため、cnvDに集中してDNA鎖交換の反応解析を行ったため、当初の計画より有機合成試薬、有機溶媒などを大量に必要としなくたったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度開発に成功したcnvDを含むODN合成に関わる試薬ならびにゲル解析の為の試薬などに使用予定である。
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Research Products
(5 results)