2014 Fiscal Year Research-status Report
リポソーム型細胞架橋剤:迅速セルソーティング法と機能化自在マトリックスの創製
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26620136
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 健 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335785)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | セルソーティング / 細胞外マトリックス / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、細胞間凝集を行うためにリポソームを用いて、その構造最適化と手順の最適化を目的とした。具体的な成果は次の通りである。スクシンイミド修飾脂質をEpCAM抗体と反応させ、EpCAM抗体修飾DSPEを合成した。一方、ホスファチジルコリン/コレステロールと混合し、水和法にてリポソームを調製したのち、エクストルーダーで粒径を調整した。これに、合成脂質を修飾し、目的の抗体修飾リポソームを得た。リポソームの粒径は650 nm程度となり、抗体を修飾した直後では450 nm程度となった。また、超遠心分離(105 G)操作後もこの粒径を維持した。次に、抗体修飾リポソームの細胞凝集能評価として、ヒト口腔由来ガン細胞KB細胞(EpCAM (+))を用い、ここに抗体修飾リポソームを加えた。4 ℃で30 分間震とうした後に、遠心操作を加え、沈殿した細胞を回収した。その結果、100個程度の細胞からなる凝集体が多数観察された。また、このときリポソーム由来の赤色蛍光が凝集体上から観察された。一方、抗体未修飾のリポソームではこのような凝集体は観察されなかった。以上より、抗体修飾リポソームが架橋剤として機能し、細胞同士が凝集していることが示された。また、PI染色法より抗体修飾リポソームは細胞毒性を示さないことがわかった。また、一旦凝集した細胞は、ピペティングによって一細胞レベルまで容易に再分散できることを確認した。これは分子集合体であるリポソームを架橋剤として用いることの利点と考えられる。本手法は細胞分取の新たな方法となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていたリポソームの最適化に関しては、200 nm程度の粒径のもので、効率的に凝集させうることが分かった。粒径が大きいと、比表面積が小さくなり、結果として架橋の効率が悪くなることが示唆された。また、手順の最適化に関しては、せん断応力が強いと考えられる攪拌では凝集が起こりにくいが、しんとうでは凝集が促進されることが分かった。また、細胞を回収する際に行う遠心により、さらに細胞の凝集が促進されることが分かった。以上より、これらの当初の目的はほぼ達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、明らかになった問題として、細胞間接着たんぱく質により、異細胞での凝集が起こってしまうことがある。MSCなど応用上重要な細胞もE-カドヘリンなどの接着タンパク質を発現している。したがって、この問題を解決するために、非特異的な細胞の凝集を起こさず、かつ、細胞間接着を促進するような架橋剤の開発が必要であることがわかった。そこで、次年度は、そのような架橋剤の開発を目的とする。具体的には、オリゴヌクレオチドを接着分子として用いて、これを十分なリンカーを介して細胞膜に修飾して、目的細胞間の選択的な凝集を達成する。
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