2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26620138
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
杉本 直己 甲南大学, 先端生命工学研究所, 教授 (60206430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊太郎 甲南大学, 先端生命工学研究所, 講師 (40456257)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 核酸 / RNA / 熱力学的安定性 / 高圧力 / 遺伝暗号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生命挙動のセントラルドグマである複製、転写や翻訳という遺伝子の発現に関わる反応に対して高圧力が与える影響を調べ、圧力の摂動により人為的に遺伝子発現を制御することを目的とする。H26年度は、まず転写や翻訳反応に影響を与える鋳型核酸の構造の効果を常圧下で検討した。その結果、転写反応においては、鋳型核酸が形成する非標準構造が安定であるほどRNAポリメラーゼによるRNA重合反応が阻害され、遺伝暗号通りにRNAへの転写が起こらないことが明らかになった(PLOS ONE, 9, e90580 (2014)、Nucleic Acids Res., 42, 12949-12959 (2014))。また、翻訳反応においては、RNAの構造変化をフラビンモノヌクレオチドの添加によって制御する技術を開発した。RNAの構造によってリボソームによるRNAへの相互作用を制御することで、人為的に翻訳反応速度を調節できた(Angew. Chem. Int. Ed., 54, 905-909(2015))。一方、上記の転写・翻訳反応に与える高圧力の効果を観察するために、高圧力条件下において基礎的な核酸構造の安定性解析を行った。その結果、種々の配列、あるいは立体構造を持つ鋳型核酸の熱力学パラメータを得た。さらに、転写や翻訳反応における用いられるタンパク質酵素などの圧力耐性について評価した。それにより、高圧下での反応後産物から鋳型核酸への圧力効果による影響のみを抽出して解析するための予備データを取得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では摂動として高圧力を用い、遺伝情報を人為的に改変することを目的としている。H26年度は、転写や翻訳反応において鋳型となる核酸の物理化学的な安定性と生化学的な反応特性を評価した。その結果、転写や翻訳反応の鋳型核酸が形成する四重らせん構造などの安定性によって反応速度の低下や停止が起こることを見出した。それらにより遺伝暗号の法則に従わない異なる反応産物が得られた。(PLOS ONE, 9, e90580 (2014)、Nucleic Acids Res., 42, 12949-12959 (2014)、Angew. Chem. Int. Ed., 54, 905-909(2015))。これらの成果は、鋳型核酸の配列が持つ構造安定性を調節することで人為的に転写・翻訳反応を制御できた好例といえる。高圧力下での鋳型核酸が与える転写・翻訳の影響は検討段階であるが、高圧力下でのグアニン四重鎖構造などの安定性のデータは集まりつつある。以上から、本研究課題において、現在までのところ当初の計画通り順調に成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は引き続き、高圧力下での種々の核酸構造の安定性評価を行う。グアニン四重鎖以外にもその相補鎖であるシトシンが豊富な配列から形成されるi-motif構造の安定性に及ぼす高圧力効果も解析する。続いて、グアニン四重鎖やi-motif構造を形成する鋳型核酸からの複製や転写反応に対する高圧力の効果を解析する。高圧力下での鋳型核酸の熱安定性に応じて、各反応の速度や産物がどのように影響を受けるか解析する。さらに、鋳型核酸の構造に特異的に結合するリガンド分子や分子クラウディング効果で核酸構造の安定性を変えるポリエチレングリコールの存在下、高圧時の核酸構造の安定性と複製や転写反応に及ぼす影響を解析する。これらの解析結果を初年度に見出した常圧時での結果と照らし合わし、高圧力が及ぼす遺伝子の発現過程への影響について議論する。
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Causes of Carryover |
年度末に購入予定の試薬の納期が間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該試薬の購入に充てる。実験の進捗に及ぼす影響はほとんど無い。
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