2014 Fiscal Year Research-status Report
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26620157
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊田 進太郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70404324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水蒸気電解 / 水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、クリーンなエネルギーキャリアとして水素が注目を集めている。その中で固体酸化物水蒸気電解(SOEC)は、高効率で環境にやさしい水素生成方法の一つとして知られている。また、半導体電極を用いた水の光分解では水の理論分解電圧よりも小さな電圧で水素が生成可能である。そこで本研究では固体酸化物水蒸気電解において、水蒸気の分解反応が行われるカソード電極に光触媒として機能する酸化物半導体材料を用い、そこへ光照射を行うことで、水蒸気の分解反応に対する光照射の効果および水蒸気電解の高効率化の検討を行った。電解質としてLa0.9Sr0.1Ga0.8Mg0.2O3、カソード電極としてCaFe2O4、アノード電極としてBa0.6La0.4CoO3を用いて水蒸気電解を行った。カソード側の水蒸気はArをキャリアガスとして水蒸気を流速で導入し、アノードには空気を用いた。光源としてはXe光(500W)、赤色のレーザー(650nm,100mW)と緑色のレーザー(532nm,100mW)を用いた。500, 600, 700℃において定電圧を印加した状態でカソード電極へ光照射を行い、その際の電流値の変化を観測した。セルに1.4Vを印加した状態で、赤色と緑色のレーザーを照射した場合、電流値の変化率はいずれの温度においてもおおよそ同じ割合(500℃:1.3~1.6%、600℃:0.67~0.7%、700℃:0.4~0.42%)を示した。Xe光を照射した際には赤色、緑色のレーザーよりも大きな電流値の変化率(500℃:11.9%、600℃:5.3%、700℃:2.2%)を示した。このように、光照射により水蒸気電解の電流値の向上が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はSOECセルに光を照射することで電解電流が増大するかどうかの確認を第一の目的と実施した。その結果、先に示したように、セルに1.4Vを印加した状態で、赤色と緑色の単色光を照射すると電流値が増大し、また同時に水素生成も観察されたことから、1.4Vで水蒸気が分解していることが確認された。つまり、SOECセルに可視光を照射することで電解電流の増大が起こることが明らかとなった。 その他、室温の水の理論分解電圧(1.23)Vよりも小さな0.9Vで電解を実施したところ、生成効率は小さかったが水素の生成が確認され、太陽電池を電源に用いることでも水蒸気電解が可能であることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度に開発した電解装置を使用して、水蒸気電解の電流密度の向上を目指す予定である。初年度に用いる予定の電解セルでは配線抵抗が30Ωあり、太陽電池を電源として用いて太陽光エネルギー変換効率20%程度を目指す場合、配線抵抗をさらに小さくする必要がある。配線抵抗は技術的に小さくすることが可能であり、すぐにでも対応できると考えている。次に、従来までSOECの熱源には工場や原子炉の排熱が利用されていたが、本年度は排熱に頼らないSOECシステムを検討する予定である。昨年度の研究で太陽光を集光することで電解に必要なセル温度を得れることは確認しているが、集光システムは不十分であるため今年度は集光システムの改善を目指す予定である。セルの問題としては、現状では800℃、1.0Vで200mA/cm2しか電流を流せないが、目標は300mA/cm2を目指している。高出力化に関してはPLD法を用いた電解質薄膜作製を実施する予定である。この製膜方法を用いると、実際、3A/cm2の出力を得ることにも成功しており、本セルにも応用できると考えている。H27年度は上記の改良により、排熱を利用しない光太陽光アシスト高効率水素製造システムの開発を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
H27年度は電解セルの加熱方法、セル構造、最適な分析方法をプロトタイプの装置で検討してきたが、年度内に最終的な構造が決定しなかった理由で、必要な物品を購入できなかったために当該事象が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終的なセル構造や評価方法がH27年度の前半には決定できる予定なので、それに応じた物品や装置を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)