2014 Fiscal Year Research-status Report
超分子集積化による励起ダイナミクス制御と革新的光エネルギー変換機能発現
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26620159
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
羽會部 卓 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70418698)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子集合体 / 光エネルギー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
平面型多環芳香族炭化水素 (PAH) はπ共役構造に起因する光・電子物性や特異な集積特性を示すため電子デバイス等への応用展開が期待できる。通常、PAH は主にp型半導体特性を示すが、芳香環に電子求引性置換基を導入するとn型半導体の挙動を示す。我々はこの性質を利用し、一貫してイミド基を中心とした強い電子求引性置換基をPAH の一種であるベンゾペリレンやコロネンに導入することを検討している。一方、イミド基はイミド基内部の窒素上に水素原子を配置すると、トリアジニル基との強固な三重水素結合形成が可能となる。これによりゲスト分子を簡便に導入可能となり、新たな分子集合体が構築できる。本研究では、ゲスト分子としてポルフィリンやペリレンを利用し、光捕集や電子移動による光エネルギー変換プロセスが連続的に発現可能な新規分子集合体の設計・合成および光物性評価について検討した。本研究で用いるNH型イミド基を有する2種のコロネンおよびベンゾペリレンイミド誘導体CorDI-NHおよびBpTI-NHはペリレンあるいはペリレン酸二無水物を出発物質としDiels-Alder反応を鍵とする経路により合成した。次に、合成したBpTI-NHと亜鉛ポルフィリンC12-ZnPを用いて分子集合体の構築について検討した。BpTI-NHの CDCl3溶液にC12-ZnPを添加しながら1H-NMRを測定していったところ、BpTI-NHのイミド基内のプロトンが低磁場方向にシフトした。したがって、BpTI-NHのイミド基とC12-ZnPのトリアジニル基部位において水素結合による分子集合体を形成していると考えられる。また、粉末X線により超分子構造の詳細、ESR測定やフェムト秒レーザ過渡吸収測定による光電子移動メカニズムについても明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各分子ユニットの合成に一通り成功し、ポルフィリンとベンゾペリレンイミド誘導体における超分子形成と光エネルギー変換過程のダイナミクスの発現を確認することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に合成した分子群を用いて分子集合体構築については次のように進める。ドナー(D)及びアクセプター(A) 分子を一定濃度条件(1-50 μM)で良溶媒中に加熱溶解させ、超分子形成させる。次に、必要に応じて混合溶媒で会合形成させる。選択肢として① 良溶媒のまま(一種)、② 良/貧溶媒(二種混合)、③ 界面活性剤を含む良/貧溶媒(三種混合) である。集積体作製後に定常分光法で会合形成、動的光散乱装置(DLS)でサイズを評価する。サイズは直径:10-100 nm、長さ:100 nm-1μmの範囲で制御する。また、単結晶構造解析と粉末X線解析を併用して分子配向性や面間距離などの議論を行う。作製した分子集積体はDLS、TEM、SEM及びAFMにより構造観察し、サイズ及び形状の評価を行う。次に、申請者が所有するナノ秒過渡吸収及びピコ蛍光寿命装置により励起ダイナミクスの速度論解析を行う(申請者の解析報告例:J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 1216等)。より速い時間分解能(フェムト秒)の測定装置が必要な場合は連携研究者に測定を依頼する。最終的に光電変換セルと光触媒系をそれぞれ構築し、光エネルギー変換特性を評価する。
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Research Products
(6 results)