2014 Fiscal Year Research-status Report
BNA有機単結晶極細ファイバーの作製技術開発とTHz波発生装置への応用
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26620162
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鎌田 圭 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60639649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧田 佑馬 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 訪問研究員 (50714820)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機非線形単結晶 / マイクロ引下げ法 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
μ-PD法を用いたファイバー単結晶作製技術を応用し、融液成長法によるBNA単結晶ファイバー作製の検討を行った。始めに、μ-PD装置の改良を行った。低温チラーによるアフターヒーター部の冷却機構の設置による精密な温度勾配制御を可能とし、160℃程度と室温に近い融点のBNAの単結晶成長を可能とした。融点の材料と坩堝材の濡れ性とBNAとの反応性の観点から検討し、ファイバー状への制御がもっとも容易な坩堝材および形状を設計した。その結果、成長速度0.1mm/minにて、[010]面を選択制御した約0.8mm径のファイバー状結晶の作製に成功した。得られた結晶についてX線ロッキングカーブを測定し、[010]面において20arcsec以下の結晶性を確認した。さらに、KTP結晶を用いた二波長光パラメトリック発振器(OPO)からの800-1000 nmの近赤外励起光を用いたTHz波発生システムを用いて、当該BNAファイバー単結晶からのTHz波の発生を確認し、5 THz、9 THz、11 THzなどで強いTHz波出力信号が観測された。この実験結果から、μ-PD法により作製したBNAファイバー単結晶においても他の育成方法由来のBNA結晶と同様に広帯域にわたって周波数同調可能なTHz波発生が可能であり、今後励起条件を最適化することによってさらなるTHz波発生の高効率化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の計画としては 1.μ-PD法結晶作製装置の低温用への改良(東北大) 2.光ファイバー一体型光波-THz波変換非線形光学素子の試作とTHz波発生の確認(理研、東北大) を検討項目として掲げ、低温域での精密温度制御のもとBNA単結晶成長可能な装置構成、成長条件を確立し、作製したBNA結晶を用いた狭線幅ファイバーレーザーによるTHz波発振の基礎検討までを目標としている。現時点で、BNA単結晶成長可能なμ-PD装置を立ち上げ実際に0.8mmm径の単結晶ファイバーを作製し、20arcsecの良好な結晶性を確認している。さらに、得られた結晶を用い、THz波発生システムを試作しTHz波発生を確認した。 以上の通り、目標に対し、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の開発課題としては ・光ファイバーと同程度の細さを有するBNA単結晶ファイバー作製技術の確立(東北大) ・光ファイバー一体型光波-THz波変換非線形光学素子の試作とTHz波発生の確認(理研) を掲げる。 今後、改良したμ-PD法育成装置を用い、ルツボの形状を最適化することで最終目標である100μ径程度のBNA単結晶ファイバーを育成する。THz波の安定発生に必要な結晶性の確保は大きな課題になると考えられる。結晶成長速度、温度勾配、雰囲気、原料純度などの結晶作製条件を最適化することで、THz波の安定発生可能な耐久性を有するファイバー単結晶作製技術を確立する。作製した単結晶は随時理研に持ち込み、THz波発生試験を行い、結晶作製とのフィードバックを図る。また、THz発生試験においては、BNAファイバー単結晶の直径および<010>軸からのズレ、結晶の耐久性が問題となる可能性がある。このため、既存の溶液成長法を用いた高品質BNA結晶と比較しながら、光ファイバー一体型光波-THz波変換非線形光学素子試作に向けて、BNAファイバー単結晶を用いたTHz波発生を実験的に試みる。この実験結果から、素子ジオメトリの最適化や最適なファイバー結晶直径・長さおよび許容できる方位ズレについて検討する。加えて、光ファイバーとの接合のためには、ファイバー結晶の端面研磨やアンチリフレクションコーティングなどの表面加工が必要となる可能性がある。理研で培われた研磨、表面加工方法をもとに課題を解決する。理研でのTHz波発生試験と東北大での結晶作製とのフィードバックを図り、素子試作、評価を迅速に進める。
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