2015 Fiscal Year Annual Research Report
キラル超分子ゲル中の不斉場における光学異性体の分離
Project/Area Number |
26620163
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
小玉 康一 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (90509712)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 光学分割 / 超分子ゲル / ゲル / 有機塩 / 不斉認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キラルなカルボン酸とアキラルなアミンの塩から形成される二成分低分子ゲル化剤を利用したキラル超分子ゲルを作製し、その内部のキラルな環境を利用した光学異性体の分離を行い、超分子ソフトマテリアルを新たな分子認識材料として利用する可能性を開拓することを目的とした。 昨年度までの実験において、様々なキラルなカルボン酸の構造検討を行い、L-アスパラギン酸に剛直な芳香環、アミド部位、柔軟な長鎖アルキル基を導入したキラルなジカルボン酸(A)を合成した。Aとアキラルなジアミン(B)の塩がトルエンや四塩化炭素をゲル化する二成分低分子ゲル化剤として機能することがわかった。最終年度は得られたABゲルを用いた芳香族アルコールである1-フェニルエタノール(C)の光学異性体分離の検討を主に行った。まず、あらかじめ調製したABゲルの上にCを含む四塩化炭素溶液を加えて静置し、その後ゲルに吸着されたCを再び四塩化炭素で抽出し、その光学純度を測定した。しかし抽出されたCはラセミ体であり、全く不斉識別されていなかった。 そこで別の方法を検討するため、初めからCを含む四塩化炭素溶液にAB塩を加え、加熱・冷却過程を経てゲルを作成した。Cの存在下であってもABゲルが得られ、Cはゲル化を阻害しなかった。得られたゲルから四塩化炭素によってCを抽出し、その光学純度の経時変化を調査したところ、1日後にはラセミ体のCが得られたのみであったが、5日後に抽出されたCの光学純度は6%であり、R体が過剰に含まれていた。これはS体の方がABゲル中に留まりやすいことを示しており、ゲル内部の不斉環境を利用して、低効率ながらCの光学異性体の分離に成功した。今後はゲル化剤の濃度や用いるアルコールCの当量、静置時間などの検討を行い、分離効率の向上および不斉認識の機構解明を目指す。
|