2015 Fiscal Year Research-status Report
人工クチクラの開発-斬新な材料設計に基づくバイオミミクリーの新展開-
Project/Area Number |
26620183
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宇山 浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70203594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クチクラ / クチン / バイオミミクリー / セルロース / バイオベースポリマー / 植物油脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の表皮にはクチクラがあり、一部の植物では良く発達することで丈夫な膜を形成し、木材には見られない優れた撥水性と柔軟性を示す。クチクラは不飽和脂肪酸の重合体であるクチンと非水溶性の脂肪酸エステルであるワックスから構成されている。本研究ではクチクラの構成成分を単純化し、人工的に合成できる材料や用意できる成分による再構築に基づく人工クチクラの開発を行った。具体的には人工クチンシートとセルロースシートの階層的複合化を検討した。重要成分となる人工クチンとして、昨年度に検討したダイマー酸ポリアミドアミンと脂肪族エポキシの反応によりネットワークポリマーに加え、植物油脂であるリシノール酸をベースとする人工クチンの合成を検討した。ハイパーブランチポリ(リシノール酸)(HBPRA)をポリグリセリンをマクロ分子開始剤に用い、p-トルエンスルホン酸存在下にリシノール酸の重合により合成した。HBPRAは優れた熱安定性、低いガラス転移温度、低い粘度、容易な架橋性、良好なフィルム形成特性等を有し、潤滑剤、添加剤、接着剤、及びコーティング材料といった有望な用途が想定される。次に植物のクチクラを模倣した材料として、UV照射で誘起されるチオエンクリック反応を利用して、HBPAとアモルファスセルロースフィルムから開発した。このアモルファスセルロースフィルム(ACF)はセルロースのLiCl/DMAc溶液から作製し、興味深い結晶構造、光学的性質、機械的性能、酵素加水分解率を示した。本研究で開発したバイオミメティックの人工クチクラは高透明性、良好な力学物性、およびユニーク表面特性を有していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに人工クチクラの概念を具現化する階層的複合材料の創製を達成した。人工クチンポリマーの合成では、ダイマー酸やリシノール酸といった植物由来の材料を用いることでバイオベース含有率の高い人工クチンを得ている。更に今年度に開発した人工クチクラは透明性等に優れるため、表示材料や包装材料への応用も想定され、バイオミミック材料開発の新しい切り口を切り開いたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した人工クチクラの物性・機能の評価を行うとともに、この研究で新たに示した材料設計の概念を拡張して、機能性材料開発につなげる。
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Causes of Carryover |
人工クチクラを開発する上で人工クチンと階層的な複合化ができるセルロースシートの片面のみの修飾(官能基の導入)技術が必要である。この作製条件の検討が難しく、シート全体の誘導化あるいは不均一な傾斜的な誘導化が進行するといった問題が生じた。この修飾に適した厚みや制御したセルロースシートの作製検討及び片面に選択的に官能基を導入できる条件の再検討が必要となり、研究に遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に研究を継続するための消耗品費として、各種試薬、各種ディスポ器具等が必要である。また、研究成果の発表や成果の応用に関わる共同研究の打合せに旅費(国内)が数回必要である。
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