2014 Fiscal Year Research-status Report
無機ナノシート液晶を用いる新奇な偏光発光材料の開発
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26620195
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
中戸 晃之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10237315)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 無機工業材料 / 層状・層間化合物 / 無機ナノシート / コロイド / 液晶 / 偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、無機層状結晶を剥離させた超薄層(ナノシート)のコロイドが形成するナノシート液晶を発光色素の担体に用いて、新奇な偏光発光材料を構築することである。26年度は、ナノシートへ発光色素を担持させ、ナノシートの液晶性を利用して偏光発光を実現することを目標とした。 われわれがこれまで研究してきたニオブ酸ナノシート液晶を用い、これに非偏光発光性色素であるルテニウムビピリジル錯体を吸着させ、発光に偏光性を発現させられるかを調べた。その結果、色素を吸着させたナノシート液晶を、外場印加によってマクロに一方向配列させることで、偏光発光化のできることを確認した。 しかし、検討を進める中で、ナノシート液晶のマクロ一方向配向の再現性を取りにくいことが明らかとなった。偏光性の正確な見積りには、再現性あるシート配向の実現が必須である。そこで、ナノシートの一方向配向を再現性よく行うための条件探索を行った。この配向制御は、ナノシート液晶のドメインを室温で成長させ、次いで成長したドメインに対して、重力と垂直方向に電場を印加することで実現される。この過程に影響を与える種々のパラメータを比較検討したところ、系の電気伝導度を適切な値に調整すれば、配向の再現性が得られることがわかった。系の伝導度は、系のイオン強度を反映するもので、共存電解質を適切な濃度範囲に設定することで調整できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの理由は、上述のようにナノシート配向の再現性の問題に逢着し、この解決を優先したためである。しかし、この現時点でこの問題に解決の目処がついたため、次年度から偏光発光の検討に注力可能である。また、定性的ながら偏光発光の発現を確認できているため、致命的な遅れではなく、研究の方向性としては問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、定性的に偏光発光を確認したルテニウム錯体─ニオブ酸ナノシート液晶系の研究を深度化させる。次いで、分子構造に異方性のある発光色素をナノシート液晶に導入し、色素をシート表面に一定の配列で吸着させる。結晶性のナノシート表面がもつ規則的な原子配置や電荷分布によって、色素分子を一定方向に配列させる。さらにナノシートの配向を外場によって制御し、系全体として偏光発光を発現させることをめざす。異方性の形状をもち分子の長軸方向に大きな遷移モーメントをもつ色素がナノシートにフラットに吸着したとき、シート1枚レベルでの偏光性が大きくなる。この条件を満足する色素として、ニオブ酸結晶表面に方位を揃えて吸着するシアニン色素を用いる。 次に、偏光発光性が見出された系について、発光の定量的評価と外場印加による偏光発光のスイッチングを行う。偏光発光の定量指標として、発光の強度(量子収率)と偏光性の大きさ(二色比)を測定し、既往の偏光発光材料と比較して本系の特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
未使用額が発生した主因は、ナノシート液晶の配向制御の再現性が取れず、その解決に注力していたため、新規な物品購入の必要がなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点において、上記問題がほぼ解決したため、次年度は、未使用額と合わせておおむね当初の購入計画に復して使用する予定である。
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