2015 Fiscal Year Research-status Report
マルチヘテロ接合によるフルカラーエレクトロクロミックデバイス
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26620201
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松井 淳 山形大学, 理学部, 准教授 (50361184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エレクトロクロミズム / 交互積層膜 / ナノ界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
エレクトロクロミズムとは外から印加される電圧により色が変化する現象で、フルカラー電子ペーパーへの応用に向け、多色化技術の確立が急がれている。これまでに当研究室ではレドックス伝導材料であるRu錯体とエレクトロクロミック材料であるプルシアンブルー(PB)ナノ粒子用い、Langmuir-Blodgett(LB)法により3層に階層構造化することで、単一電極でありながら色の足し合わせによる多色エレクトロクロミズムを示す新たな原理を報告してきた。また、昨年度はルテニウム錯体含有高分子電解質とPBナノ粒子との静電相互作用によりナノ積層するLayer-by-Layer(LbL)法を利用することでRu/PBの2層からなるハイブリッド薄膜の作製を行い、この2層膜がベクトル的電子移動、電荷蓄積を引き起こすことがわかった。そこで本年度は2層膜のエレクトロクロミズム特性について紫外可視吸収スペクトル測定により検討を行った。掃引前はPB由来の強い吸収が700 nm付近に見られ、電位を1.4 Vに掃引すると700 nm付近の吸収が減少し420 nm付近の吸収が増加した。これはPBがプルシアンイエロー(PY)へ酸化されたためである。一方、一度酸化した薄膜を0.5 V(vs Ag/AgCl)まで掃引したところPBおよびPY単体の足し合わせとなるスペクトルが観測された。これは、PYの一部が還元せず酸化状態を保持し、PBとPYが共存しているためであると考えられる。この結果から2層膜においては触媒的酸化サイトと直接反応サイトの存在が示唆された。また、その変化は十分に視認することができた。以上の結果より、LbL法により形成される高分子とナノ粒子の特異的な界面構造により触媒的酸化サイトと直接反応サイトができ、異なる酸化還元状態のPBナノ粒子が存在できるため多色エレクトロクロミズムが発現し、視認化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多色エレクトロクロミズムに必要な電荷蓄積機能が交互積層法で作製した厚膜においても発現することを示しており、また厚膜化により多色エレクトロクロミズムの視認に成功している。これは当初の計画通りと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
交互積層膜を用いることで多色エレクトロクロミズムを実現しているので、今後はその繰り返し性や繰り返し特性について検討する。さらにレドックス高分子として用いていたルテニウム錯体ではなく、プルシアンブルーの相補色を着色できるコバルト錯体を用い、1電極でフルカラー着色を実現する。
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Causes of Carryover |
前年度合成した高分子を用いた交互積層膜の構築とその電気化学特性について検討した。研究計画ではフルカラー化には3層に積層する必要があると思われたが、実験を行った結果2層においても特異な電気化学特性が見いだされたためそのメカニズムを明らかにする必要があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2層構造においてもフルカラー化に必要な電荷蓄積が可能であることが明らかとなったため、そのメカニズムを解明する。そのために有機溶媒中においてサイクリックボルタモグラム(CV)測定を行う必要がある。そこでCV測定に必要な高脱水有機溶媒の購入および有機溶媒に溶解する電解質の購入に使用する。さらにこれまでルテニウム錯体を用いていたがプルシアンブルーと補色の関係にあるコバルト錯体高分子の合成に必要な試薬を購入する。
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