2014 Fiscal Year Research-status Report
分光及びESR技術の併用による有機FETの動作ダイナミクス観測の実現
Project/Area Number |
26620207
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鐘本 勝一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (40336756)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機半導体素子 / 有機FET / 分光計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、安定かつ高いFET動作性能を示す有機物質の開発が進んでおり、今後は、無機物質にも匹敵できるような高速スイッチング機能を有する素子の実現が求められる。本申請は、その実現に向けて、これまで申請者が培ってきた、素子動作と分光またはESRの融合技術を活用することで、有機FETが動作する際のキャリアやトラップのダイナミクスを直接計測する技術の開発に挑むものである。本年度は主として、研究を遂行していく上での、システムの最適化を中心に取り組んだ。まず、有機FETとして最適な幾種類かの分子について、そのFETの試作を行った。その際、ガラス基板の場合と、シリコン基板の場合でそれぞれ、良好なFET特性を確認できた。特に、大気条件等の素子作成環境に依存せず、安定したトランジスタ動作が期待できる有機半導体材料について、そのFET特性が確認できた。 分光実験としては、実際のFETに対して適用するに先立ち、分光信号とキャリアの関係を計測できる技術を確立するために、ダイオードを作成して実験を行った。まずは、これまで特性がよく知られている、ポリマー型ダイオードについて調べたが、キャリアの分光信号について、その動的過程の計測に成功した。また、その計測は電流測定と同時に行った。そのため、分光信号と電流の相関のダイナミクスについて計測システムが確立できたといえる。その後は、FETにおいて使用することを想定している、分子性の半導体材料について、ダイオード作成を行い、ポリマーダイオードと同様な計測を行った。これまでその分子材料については、キャリア分光信号の特徴が知られていなかったが、明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の目標は、FET動作のダイナミクス分光計測に先立ち、その測定手法を確立し、さらには基本的に素子作成技術を身に着けることであった。上述の通り、ガラス基板の場合と、シリコン基板の場合でそれぞれ、良好なFET特性を確認できた。また、大気条件等の素子作成環境に依存せず、安定したトランジスタ動作が期待できる有機半導体材料について、そのFET特性を確認できた。さらには、作成したダイオードについて、キャリアの分光信号とその計測の同時測定システムを構築し、実際にダイナミクス計測を行えた。これは、FET動作においても電流と分光信号の同時測定が可能となることを示唆する。以上の得られた成果は、年度当初に目標としていたものであり、そのため、当初の目標はほとんど達成できたといえる。一方で、ESRについては、ダイオードでの実験を試みたものの、信号は得られなかった。この分についてはまだ技術が確立できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、FETの試作に成功し、実際に素子特性が確認できた。さらにはダイオードについて、キャリアのダイナミクスの分光計測ができることを確認した。そのため27年度では、実際のFETについての分光計測に着手する。ただし、FETへの適用では、高電圧印加など、ダイオードと比較して電気信号の取り扱いに注意する事項がある。特に、高電圧がノイズを与えないような計測系の確立を目指す。さらには、次のステップとして、ESRによるキャリアの計測技術の確立を行う。それが順調に進めば、分光とのダブル計測技術の確立を目指す。
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