2014 Fiscal Year Research-status Report
低荷重振動圧縮負荷による非可逆転位の累積を利用した金属表面層のナノ微細化制御技術
Project/Area Number |
26630001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中村 孝 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30237408)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ微細化 / 振動 / 雰囲気 / 非可逆転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,加工物表面に生成されると予想される酸化物層の生成を抑えることを目的として,大気に加え,アルゴン,窒素,高真空環境を用いて微細化実験を行なった.供試材は低炭素鋼(S25C)を用い,負荷荷重は40kgf(392N),負荷繰返し数は5×10^7 回とした.実験後に,接触部表面および接触部直下を,(a)接触面のトポグラフィ解析(表面の3Dプロファイル,変形量,粗さなどの測定)および(b)接触面直下縦断面の分析(微細化層の厚さ,粒径,結晶構造などの分析)によって調べ,微細化の程度とそれに必要な雰囲気環境を調べた.その結果,大気および窒素環境では表面から深さ5μm程度までの領域に,粒径約1μm以下のナノ微細化層の形成が確認された.これに対し,高真空環境では微細化層はほとんど形成されなかった.一方,アルゴン環境では表層部直下に微細化領域が観察されたが,微細化の程度は大気や窒素環境に比べて低かった.すなわち,本手法によって組織の微細化を実現するためには,被加工物周囲に何らかの雰囲気ガスを必要とすることがわかった.微細化層の元素分析を行ったところ,大気環境では酸素原子が,窒素環境では窒素原子が試料の最表層部に集中して存在することが明らかとなった.このことは,雰囲気ガスの選択により,任意のガス成分原子を基地組織に導入できる可能性を示している.なお,インデンターとの接触部の深さは環境によらず10~15μm程度と小さく,加工前後の表面粗さにも大きな差は認められなかった.弾塑性応力解析の結果,本手法による塑性変形の大部分は初回の負荷過程で生じていることが考察された.以上のことから,大気や窒素環境下では,低荷重を用いる本手法によって,表面状態を大きく変化させずに表層組織のみを微細化できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,金属に繰返し圧縮負荷を振動的に与え,発生・移動する転位のうちの非可逆成分を累積させることにより,表層組織のみをナノメートルオーダーで微細化する技術を開発することにある.これを達成するために,平成26年度は微細化に及ぼす周囲雰囲気の影響を実験的に調べ,弾塑性応力解析によって負荷時の変形特性を明らかにすることを試みた.研究実績の項に述べたように,これらの研究内容はほぼ当初の計画通りに進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26 年度に特定した周囲環境(大気,窒素)を用いて,アルミ合金を対象として,微細化実験を行う.負荷荷重は4kgf(39.2N),40kgf(392N)の2 種類を,繰返し数 は1×10^6 回,1×10^7 回,5×10^7 回を,また繰返し速度は200Hzを予定している.得られた接触面および縦断面の微細化層に対して初年度と同様な分析を行う.この結果とFEM 解析の結果を総合し,ナノ微細化機構およびナノ微細化を最適化する加工パラメータを明らかにする.
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Research Products
(4 results)