2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630004
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
奥山 武志 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40451538)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 指 / 力計測 / センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、指先の力と筋腱の張力の関連性に着目し、筋腱張力を計測することで指先の感覚を阻害することなく、指先力を推定する手法を確立することを目的とし、平成26年度には、筋腱の張力を計測するためのセンサ構造設計を行うとともに、実験により指先力を推定可能なセンサの基本構造を選定することができた。 具体的には、指の第2関節と第3関節の間を圧迫し、その反力を筋腱張力として計測することを基本原理として、以下の4種類のセンサ構造を試作し、実験により比較した。(1)指を平らな平板で圧迫する構造、(2)筋腱部のみを突起付き平板で圧迫する構造、(3)1と2を組み合わせ、中央に穴の開いた平板で指を圧迫し、穴から突起付き平板で筋腱部のみをさらに圧迫する構造、(4)3の指を圧迫する平板を湾曲させた構造である。 実験では、手を開いた状態で、指先にロードセルを配置し、指先のみでロードセルに力を加え、その時に、圧迫部に加わる筋腱からの反力を計測した。 その結果、(1)は、指先力に対する反力の変化が小さく、センサ構造として適さないことがわかった。(2)は、突起部を高くすることで、指先力に対する反力の変化が大きくなる傾向が見られたが、5mm程度の突起に対しては装着者が痛みを感じることもわかった。(3)は、指を平板で2mm程度圧迫し、さらに突起で筋腱部を3mm程度圧迫することで,(2)の5mm突起と同程度の計測が可能であり、痛みも感じないことが分かった。しかしながら、装着が難しく、実験の試行間の誤差も大きかった。(4)は、(3)と同様に痛みはなく、指先力に応じた反力の変化も確認できた。また、装着もしやすく、装着状態の安定性も良好であることがわかった。さらに、10Nの指先力に対しても反力の変化を計測でき、広い範囲の指先力を計測可能であった。 これらの結果から、(4)の構造を基本構造として選定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、筋腱と指先力の関係性を数理モデルで構築する予定であったが、数理モデルを構築する上でも計測システムとして、開発するセンサを利用した方が効率的であると考え、まず、センサの設計を優先させた。その結果、当初よりも多くのセンサ構造を検討することができ、その中から指先力を計測するために適したセンサ構造を選定することができた。また、次年度の計画にあったセンサ寸法とセンサ出力特性の関係に関する基礎的な知見も得ることができていることから、おおむね順調に進展していると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画していた通り、指の姿勢による指先力、筋腱張力、センサ出力の関係への影響を明らかにするとともに、センサ寸法の設計指針を構築し、新しい指先力の計測手法を確立する。 -姿勢に対するセンサ特性の検証 センサの装着位置のずれ、指の姿勢の差異、動的な指先力の変化に対するセンサ出力特性を実験により明らかにする。実験では、姿勢変化など比較的自由度の高い指先力の計測が必要であり、小型の3軸力覚センサを指先力の計測に利用し、力の方向、大きさも計測できるシステムを構築する。また、その時の指の姿勢は、動作解析システムVICON(研究室既設)で計測する。その結果を基に、センサ位置の影響、センサ出力に対する指の姿勢の影響について解析し、指の姿勢に対する補正の必要性を吟味し、適切な補正方法を考案する。さらに、センサ位置のセンサ出力への影響については、影響を軽減するセンサ構造への改良、センサの装着時のキャリブレーション手法の検討を行う。実際の使用時には、動的に指先力が変化することから、その追従性について、実験で検証する。 -センサ寸法の設計指針の構築 指の寸法には個人差があり、センサ寸法によってセンサの感度が変化することが考えられる。指のサイズとセンサ構造が、センサ出力特性へ与える影響を解析する必要があり、実験および数値解析により分析する。寸法の異なる数種類のセンサを試作し、10名程度の被験者に対してセンサ出力特性の計測実験を行うとともに、指の寸法も計測し、指の寸法とセンサ出力特性の関係を定式化し、設計指針を構築する。
|
Causes of Carryover |
3軸力覚センサを研究室既設のシステムを利用できたため、予定よりも安価でシステムを構築できたため物品費の使用が抑えられ、旅費については、当該年度の後半で研究成果が得られたため、国際会議での発表ができなかったためである。また、謝金等については、データ整理のための人員を確保することもできず、当該年度で多くの被験者を募集しての実験が実施できなかったためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
まず、前年度利用した研究室既設のシステムでは、様々な指の姿勢に対応できないため、3軸力覚センサ、ロードセル、計測用コンピュータを新規購入し、新たなシステムを構築する。また、そのための治具の製作費が必要であり、データ解析を効率的に行うための解析ソフトおよび計測制御ソフト、センサの設計改良を効率的に行うためのCADソフトを購入する予定である。さらに、12月の学会で前年度の成果を発表する予定であり、その他に国際会議での関連研究の調査を行う予定である。 前年度確保できなかった研究支援者を確保し、多くの被験者に対する実験のための消耗品、謝金、人件費として使用することで、研究のさらなる推進を図る予定である。
|