2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澁谷 陽二 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70206150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松中 大介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60403151)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノインデンテーション / ソフトマター / 表面吸着 / 接触力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1]高分子材料のナノインデンテーションの実施 5種類の高分子材料,PET(ポリエチレンテレフタレート),PTFE(テフロン),PI(ポリイミド),PEEK(ポリエーテルエーテルケトン),PC(ポリカーボネイド)の試料を作成し,現有設備のNanoIndenter G200(アジレント・テクノロジー社製)を用いて,環境温度の上昇試験により,1)ヤング率の温度依存性,2)ガラス転移温度Tgの同定と,常温において,3)押込み荷重一定試験(クリープ試験),4)押込み変位一定試験(応力緩和試験)を行った.本手法によりTgが明確に確認できた材料に対して,Tg以上の温度でのナノインデンテーションを実施し,流動性が高まった状態での接触挙動について調べた.つぎに,ナノインデンターのダイヤモンド圧子を,a)従来のBerkovich型三角錐圧子に加えて,b)フラット圧子(先端部半径R=5μmの平坦部),c)フラット圧子(先端部半径R=20μmの平坦部)のように接触領域を大きくするフラット圧子での試験を行い,効果的な吸着力が得られる試験条件を探索するとともに,圧子形状や接触面積による表面張力の発生状況を調査した.その結果,いくつかの材料に対しては明確なTgの取得ができた.効果的な吸着力についてはまだ十分な大きさを持つには至らなかった. [2]構成則モデルの同定 平成27年度以降の表面物理モデルとの整合性をを考え,[1]の3)と4)のデータから時間依存性を表す特性関数,クリープ関数と緩和関数を一般化Voigtモデルと一般化Maxwellモデルから求めた.そして,吸着を取りこんだ力学モデルとして,JKR(Johnson, Kendell, Roberts, 1971)モデルを用いた解析を行った.さらに,JKRの比較対象として,DMT(Derjaguin, Muller, Toporov, 1975)モデルの存在を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載した実験の実施やモデルの検討は当初の予定どおりに行ったので,おおむね順調に進展していると判断できる.新たのモデルの存在や実験結果の物理的解釈など問題点の抽出も成果と考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
[1]表面物理と接触力学との連成 吸着を伴う接触における内部エネルギーを考える.通常のHertzの接触理論に基づく弾性のひずみエネルギーは簡便に計算できる.それに対して吸着によるエネルギーを現象論的に見積もり,それらを合わせることで系の持つ内部エネルギーが算出できる.吸着に伴う押込み荷重増分と押込み変位の増分が,接触半径を介して線形に関係づけられている.これを接触半径の摂動に対する変分問題として考え,変分原理から支配される押込み荷重と押込み変位の関係式が得られることになる. 検討すべき点は,i)表面物理の観点から,上式の線形関係式の妥当性そして弾性率の物理的意味を明確にすること,ii)圧子と表面相あるいは液相との界面の接触角を決定する表面張力の関係式(Youngの式)との整合性,そしてiii)表面物理における熱力学的考察,の3点について考察を行い,2つの物理が連成するマルチフィジクス問題としての定式化を行う.また,従来の吸着を考慮しない押込み関係式では,圧子形状に応じて押込み荷重と押込み変位は非線形の関係になる.したがって,圧子形状に依存した定式化も同様に行う. [2]生体試料への適用 保水性の著しい試料の押込みでは,液相の生成とともに表面張力の発生により接触近傍の挙動に大きな影響を与えることが予想される.大阪大学歯学部との共同研究により,老化に伴い糖化が進む歯牙の特性変化について調査する.色調や物性の変化をナノインデンテーションで評価することで生化学的経年効果を確認することを試みる.試料の歯牙は断面をスライスした後,保存水で保持し,保水された状態での押込みを実施する必要がある.通常状態の歯牙のヤング率や硬度に比べて,糖化することにより脆化することが予想されので,部位によるヤング率や硬度の違いを検出することを行う.
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Causes of Carryover |
当初予定していた物品(タングステンカーバイト(WC)を用いたBerkovich三角錐圧子)の製作が遅れ,平成27年度に購入予定とした.そのために,当初所要額より実支出額が少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験を継続的に進める上で,新たな硬質材料(WC)を用いた圧子の購入等を予定している.
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Research Products
(3 results)