2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630032
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木塚 徳志 筑波大学, 数理物質系, 教授 (10234303)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 摩擦 / 摩耗 / 電子顕微鏡 / その場観察 / ナノマシン / 凝着 / 剪断応力 / 垂直抗力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に開発した、その場電子顕微鏡法を基盤として、ナノチップを基板に接触させて真実接触境界を作製し、その後、これを材料表面と平行に移動させて、摩擦を起こすことができる電子顕微鏡観察システムを用いて、本研究の主眼である原子直視法による摩擦実験を実践した。特に、ナノメートルサイズの摩擦でしばしば用いられているような、ナノサイズの突出部同士の接触ではなく、いわゆる一般的な摩擦である、ほぼ平らな固体表面に摩擦を起こさせる物体を接触させ、固体表面に平行に物体を移動させ、そのときの摩擦を原子レベルで解析することに成功した。まず、この過程における物体-固体表面の原子挙動を直接観察し、凝着の開始とその後の変化を原子レベルで初めて明らかにすることができた。この構造解析は、ナノメートルスケール、原子スケールの摩擦で何が起きているのかを解明する最も基礎的なものであり、本研究にとって中核的な成果になった。さらに、従来のナノスケール摩擦の実験では、摩擦方向に凝着部に作用する力、つまり摩擦力を測定することはできなかったが、本年度はこの摩擦力を、前述の摩擦の直接観察と同時に実測することに成功した。この測定には、この摩擦力を測定するためのカンチレバーの、この方向の弾性定数が必要であったが、従来、この値は不明であり、それが摩擦力の実測を妨げていた。本年度は、用いたカンチレバーを走査電子顕微鏡で詳細に観察してその形状を全て取込み、有限要素法を用いて、この弾性定数を算出して、この問題を解決した。こうしたこれまでにない解析により、原子・ナノスケール摩擦における凝着原子挙動、垂直抗力、摩擦力、および凝着部の剪断応力の変化などが明らかになった。この結果、従来手がつけられていなかった、これらのスケールの摩擦におけるアモントン-クーロンの法則の成立と破綻が、どのような条件で実現するのかを解明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のねらいは、原子直視法による新たな摩擦実験法の開発にあり、その成否はその場電子顕微鏡法を基盤として、ナノチップを基板に接触させて真実接触境界を作製し、その後、これを材料表面と平行に移動させて、摩擦を起こすことができる電子顕微鏡観察システムの構築にあった。昨年度に、手法開発に焦点を当てて研究を進めてきた結果、本年度は、前項の研究実績の概要に記載したように、この目的に合致した本研究の主眼である原子直視法による摩擦実験を実践することができた。これは、ナノメートルサイズの摩擦でしばしば用いられているような、ナノサイズの突出部同士の接触を扱った特殊なものではなく、いわゆる一般的な摩擦を原子直視下で実現できたことを意味する。この結果、本研究で当初最終的な目標としていた、原子・ナノスケール摩擦における凝着原子挙動、垂直抗力、摩擦力、および凝着部の剪断応力の実測が、原子直視観察と同時に可能になった。この点で、本研究における手法論は、本年度にほぼ確立したといってよい。
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Strategy for Future Research Activity |
前項の現在までの進歩状況に記載した通り、本研究の主眼である原子直視法による一般的な摩擦の実験を実践する手法論を本年度に確立することができた。今後は、この手法を用いて、様々な表面状態における摩擦を起こし、その条件と結果を対応させ、原子直視法によって摩擦の機構を解明するとともに、摩擦の構造ダイナミックスを研究するための実験的な基盤を構築する。また、ナノサイズのメカトロニクスに関係する種々の材料の摩擦の特徴をまとめ、本手法が、ナノ電気機械システムなどに応用できる機械・構造材料を開発できる研究手法になるように改善していく。
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[Book] Carbon Nanomaterials Sourcebook Volume II2016
Author(s)
Tokushi Kizuka(分担執筆), A. Kocsis, D. Fazzi, K. Hirahara, A. P. Terzyk, B. Trzaskowski, P. Kowalscyk, M. Soszynski, Z. Zhang, B. Noroozi, K. P. SIngh, N. Batisse, Y. Aykut, S. Chigome, B. Garg, S. Mondal, T. Nakamura, N. Aguayo, G. Hwang, B. Zhang他
Total Pages
735
Publisher
Taylor & Francis, Oxon
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