2014 Fiscal Year Research-status Report
広視野レーザ顕微鏡に適した位相シフト法のための疑似位相像出現メカニズムの解明
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26630037
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
新田 勇 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30159082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機械要素 / レーザ走査干渉計 / 位相シフト法 / 広視野レーザ顕微鏡 / シュリンクフィッタ / ナノ計測 / 広領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
広視野レーザ顕微鏡は,同じ倍率で比較すると光学顕微鏡の数百倍広い視野を持つレーザ走査型の新しい顕微鏡である.この顕微鏡を用いて,レーザ干渉像を取得した場合,10mm四方の領域の高低差をナノレベルで計測できる.しかし,通常の干渉計測では位相シフト法を使用するために,参照板の高さ位置を変えながら同一箇所の画像を4~5枚取得しなければならず,計測時間が長くなる欠点を有していた.申請者は,参照板に特殊なコーティングを施すことにより,1回の画像取得で擬似的な位相シフト像が取得できる現象を発見した.複数枚の干渉画像を演算することでしか求められない位相像が,なぜ一度の観察で求まるかは現在のところ不明である.本研究ではこの新規な現象がなぜ生じるかについて,その原理を解明することを研究目的とする. ガラスの参照板に,種々の金属を成膜した.成膜装置はECRスパッタ成膜装置を使用した.使用した金属は,Au,Cu,Ni,Ti,Fe,Cr の6種類である.成膜時間は3種類に変えて,一つの金属薄膜に付き膜厚が異なる3枚の参照板を用意した.成膜した参照板の反射率と透過率を分光光度計により計測した.また,金属薄膜の膜厚測定には走査型プローブ顕微鏡と顕微エリプソメータを使用した.観察面はCu円板で,その直径は 32mm,厚さは3mmであった.その表面性状は,表面粗さRa=90nm,PV=448nm(全面),反射率Rt=85%であった.観察Cu円板と参照板の間隔をnmで調整できる治具を作製した. すべての参照板で,正弦波状以外の強度分布を持つ干渉縞が観察された.干渉縞のパターンは,成膜した金属の種類に依存した.しかしながら,成膜する金属とその膜厚によって,明瞭な非正弦波状の干渉縞が生成することが分かった.各金属について,最適な膜厚を決める方法について考察した.以上のように,当初の計画通りの結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,これまで開発した広視野レーザ顕微鏡がレーザ走査干渉計として使用することの可能性を調べることが第一目標であった.参照板と観察Cuサンプルは一定の間隔を保ったまま固定され,直動ステージに取り付けられた.レーザは回転ミラーにより走査され,走査レンズを通り,サンプル平面を横方向に走査する.直動ステージによりサンプル平面が縦方向に移動するので10mm×8mmの領域の画像が取得できる.本研究では,干渉縞 を生成するのに適した光学系へと改良することを予定していたが,参照板に成膜することで明瞭な干渉縞が生成することが判明したので,第一目的は達 成された. 特殊なコーティング付参照板の効果については,参照板に金属薄膜コートを施すことにより,従来の位相シフト法では必要であった参照板の移動を不要とすることができた.したがって,この新規な技術を用いることで,広い視野において物体の高精度形状計測が短時間で行えることが確認できた.本研究では,なぜこのような現象が生じるかを明らかにすべく,参照板の表面にナノレベルでコートする材料をAu,Cu,Ni,Ti,Fe,Crなど に変えて画像を取得し,コーティング材料の屈折率などが干渉縞パターンに与える影響を調査した.このようなことを行い,疑似位相像が現れたり消えたりする原因が実験的に特定できた. 高さ方向の計測ソフトウェアの開発については,疑似位相像が得られた場合,従来の位相像と同じようにそれらを積算することで,元の形状が得られるかを確認する必要がある.従来の位相像と同じような取り扱いができるかは,引き続きの調査が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も平成26年度と同様に下記2項目の研究を継続する. ・金属薄膜を付与した参照板の光学特性の調査 ・特殊コートと疑似位相像の関係 ・研究成果のとりまとめ 得られた知見やソフトウェアなどの研究成果を,分かり易い形となるようにまとめる.
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Causes of Carryover |
当該年度の3月に実施した出張旅費の支払いが,次年度4月となったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「次年度使用額」となった12,860円は,すでに平成27年4月に支払い済みである.
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