2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630041
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐々木 信也 東京理科大学, 工学部, 教授 (40357124)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | トライボロジー / イオン液体 / 電場制御 / 超低摩擦 |
Outline of Annual Research Achievements |
境界潤滑下で超低摩擦特性を発揮するイオン液体潤滑軸受の実現を目指し,外部電場による摩擦界面近傍のイオン液体構造への影響を調べ,電場による境界潤滑特性を制御するための新たな学術的基盤を築くことを目的として,大きく3つの項目を設けて研究を進めている. (1)動的環境下における表面近傍でのイオン液体構造の解析:和周波発生分光分析装置に摩擦機構を付与し,摩擦状態にある表面近傍のイオン液体構成分子種の状態を動的に計測するための手法を開発し,オレイン酸を用いた予備実験により吸着分子の配向が摩擦せん断場により変化することを確認した. (2)電場による境界潤滑特性の制御:表面電位を印加しながら,微小な摩擦係数を高精度に測定可能な摩擦試験装置を試作した.境界潤滑特性に及ぼす電位印加の影響に付いて調べる実験を開始したところ,イオン液体と鉄材料との電気化学反応が起こり,その電蝕による摩擦・摩耗特性への影響を排除するための対策が必要であることがわかった.現在,鉄表面に保護コーティングを施すことにより,電腐を抑止しつつ,摩擦特性を制御可能な摩擦実験系を模索しているところである. (3)超低摩擦発現メカニズムの解明:マクロな実験系で確認された超低摩擦現象について,メカニズムの解明を目的として微小部位での現象再現を目的として,液中原子間力顕微鏡(AFM)の水平力分析モード(LFM)を用いた実験を行った.試料表面およびカンチレバーチップ先端の電位を変化させることにより摩擦力に及ぼす表面電位の影響を調べるため,チップ先端に電位を印加可能とするよう装置を改造し,測定精度への影響が無いことを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イオン液体に浸漬した鉄系摩擦試験片に,電圧を印加したところ電蝕により摩擦・摩耗特性が影響を受けることが分かった.そこで,試験片表面に電蝕保護コーティングを施して防ぐことを考え,条件出しのための実験を繰り返した.これにより,電圧印加による摩擦制御性に関する実験開始が遅れた.
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Strategy for Future Research Activity |
電蝕による影響は,DLCコーティングを施すことにより抑制可能であることが分かったので,当初の予定通り,研究を進める.具体的には以下の通りである. (1)動的環境下における表面近傍でのイオン液体構造の解析:電圧印加による分子構造の変化を計測するため,ITOによる透明電極およびこれを保護するためのSiO2薄膜の成膜条件を最適化する.これにより,電場制御によるイオン液体分子種による境界潤滑膜形成と摩擦条件下での構造変化を動的に計測するための分析手法を確立する. (2)電場による境界潤滑特性の制御:安定した境界潤滑状態を維持するため,摩擦する2固体間の界面間隔をナノオーダーで制御可能な精密な位置決め機構を開発するとともに,固体接触が余儀なくされる摺動表面材料として,耐摩耗性に優れ電気絶縁性の高い材料を選定する.上記の計測から得られるイオン液体の界面構造と電場との関係より,マクロな境界潤滑特性と吸着膜構造との相関を明らかにする. (3)超低摩擦発現メカニズムの解明:超低摩擦現象のメカニズムを解明するため,AFMカンチレバー先端と試験片との界面に存在するイオン液体のイオン種を系統的に変化させ,摩擦低減効果の高い分子構造を明らかにし,マクロ特性との相関を明らかにする. (4)新規イオン液体軸受の性能検証:上記の知見をもとに,イオン液体と表面材料の最適な組合せを選定し,摺動表面への電圧印加可能な滑り軸受を試作して性能評価を行い,境界潤滑下で超低摩擦特性を発揮する超潤滑イオン液体軸受の実現可能性を実証する.
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