2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26630042
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
後藤 真宏 独立行政法人物質・材料研究機構, MANA, MANA研究者 (00343872)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 光トライボロジー / ナノトライボロジー / トライボロジー / 摩擦 / 有機分子 / 走査型プローブ顕微鏡 / レーザー / 真空 |
Outline of Annual Research Achievements |
水中環境下で、有機分子がコーティングされたカンチレバーを用いてナノレベルの摩擦力の測定を行った際、光を照射することにより摩擦力が低減することを我々は発見した。真空環境下で同様の実験を行うことにより、この現象のメカニズムをナノレベルで解明し、さらなる材料の低摩擦化を実現するための知見獲得を目的とする。本年度は、真空環境ナノトライボロジー光照射その場観察システムの構築を主眼とした。具体的には以下の通りである。現在、所有しているナノトライボロジー測定装置を光導入が可能な構造への改造を試みた。まず、試料ホルダー部分に小型のミラーを導入することで光導入を試みた。しかし、ナノ摩擦測定時の光むらによるエラーの問題、光導入光軸合わせの困難性、ノイズの増大等の問題が発生したために、この点を踏まえて再度、光導入系を作り直した。ピエゾスキャナー上部に円筒形の光導入ブロックを重ねて固定し、ナノトライボロジー測定装置本体の中間部に新たに光導入に向けたビューポートを設けた。また、これまで用いていた水銀ランプの分光照射光源では光強度が低いため、レーザー光源を新たに導入し、これを光励起に用いた。レーザー光源は多段NDフィルターで強度調整を行い、ビームの均一化のためにレーザー照射強度の良好な部分のみを試料ホルダー部に導入できるような光学系を構築した。さらに、測定本体部を真空排気するためのターボ分子真空排気系を設置する改造を行なった。この装置を用いて、大気中ならびに真空環境下でナノレベルでのシリコンとサファイア基板との摩擦力の測定を行い、有機分子が固定されていない状態での摩擦力の基礎データを取得した。さらに、ピレン分子をカンチレバーに固定する方法を検討し、従来よりもカンチレバー先端部にのみ多量の分子を固定する方法を見出した。これにて、容易に分子固定されたカンチレバーの準備が可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に設定したことは、①真空環境ナノトライボロジー光照射その場観察システムの構築、②真空環境下における有機分子と材料との摩擦力の光波長依存性に関する研究、③異なる有機分子を用いた摩擦力の光波長依存性に関する研究であった。そして、平成26年度に設定した研究実施計画は、そのうちの①と②を実施することであった。前述の研究実績の概要で述べた通り、①のシステムを完成させることができた。実際に製作すると前述の通り、様々な問題が発生し、予定よりも大幅に労力が増える結果となった。改良を重ねることとなったが、最終的には良質の光照射が可能でノイズが少なく、真空環境下でナノトライボロジー測定を行なえる装置を完成させたので予定通りであるといえる。②についても基礎データの測定を開始し、データ取得を行なっており、計画通りである。 おり、総合的に見ても、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、完成した当該装置をフルに活用し、真空環境下におけるサファイア単結晶基板とシリコンカンチレバー、ピレン修飾カンチレバー、その他有機分子修飾カンチレバーにおけるナノ摩擦力の測定を行い、さらに、そのレーザー光照射依存性の測定を実施する。また、異なる波長のレーザー光源を購入し、波長依存性についても測定を行ないたい。さらに、最終的に、これまでに行ってきた研究を総括し、励起光波長、分子の吸収波長、ナノ摩擦力変化のデータから、カンチレバーに固定した分子種の違いによる摩擦力変化の光波長依存性について総合的に解析することにより、光による摩擦力変化のメカニズムについての知見を得る。
|