2015 Fiscal Year Research-status Report
単一細胞のRNAおよびDNA同時抽出・解析技術の開発
Project/Area Number |
26630052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
新宅 博文 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80448050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小寺 秀俊 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20252471)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ流体 / 電気泳動 / 一細胞 / RNA / DNA / シークエンシング / 電気穿孔 / 前処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度に構築した一細胞RNAおよびDNA同時抽出手法を発展させ,本年度はcytoplasmic RNAおよびnuclear RNAの同時計測技術の開発,処理を並列化するマイクロ流路構造の開発,次世代シークエンシング用のパイプランプロトコルの開発に取り組んだ.まずcytoplasmic RNAおよびnuclear RNAの同時計測では,主に核内に存在するmRNAを対象とし,スプライシングバリアントおよびmRNA前駆体を網羅的に解析することを目的とした.具体的には,poly(A) tailを用いて逆転写のプライミングを行うとともに,テンプレートスイッチング法を用いた方法で全長cDNAを作成した.これと同様にcytoplasmic RNAからもcDNAライブラリを作成し,次世代シークエンシングにより解析した. これらに加えて一細胞前処理を自動化および並列化するための基盤技術構築を目指し,マイクロ流路内部に一細胞を捕獲するためのトラップ構造を導入した.このトラップ構造は細胞の捕獲に加えて電流経路の限定により,局所的に電場を集中し細胞の破砕に必要な印可電圧を従来法の1/10程度にまで低減できる.さらに,細胞質RNAの抽出時には核をトラップ構造に保持することで細胞質RNAと分離するため,従来法で不可欠であったシービングマトリックスが新しいシステムでは不要である.本年度は上記のマイクロ流路を試作し,K562細胞を利用して細胞質RNAの抽出効率および核DNAおよびRNAの検出について検討した.定量方法には抽出したRNAおよびDNAに対してhouse keeping geneであるGAPDHをターゲットとしてRT-qPCRおよびqPCRを用いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでは核サンプルを核DNAを解析に用いていたが,H27年度はnuclear RNAの解析に用いることを考案し,そのアイデアが十分に機能することを確認できた.これにより,例えばmRNAのスプライシングの詳細が一細胞レベルで解析できる.この成果は当初予想していなかったものであるが,H28年度は更にこの手法の有効性を検証する解析を更に進め,新しい一細胞解析手法として提案する.また,並列化マイクロ流体チップの開発においては,考案した構造により印可電圧が低減でき,ジュール加熱を大幅に低減できたため,電圧印可装置も簡便化することができた.これに加えて細胞を導入する際の分散溶液の選択肢も広がり,例えばPBS(phosphate buffered saline)あるいはculture mediumの様に電気伝導性の高い溶液であっても利用可能になった.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は次世代シークエンシング技術を用いた解析,多種の細胞を用いた解析の実施,並列化および自動化チップの生産技術に関する検討を行いたいと考えている. 次世代シークエンシング技術を用いた解析では,まずK562細胞を用いて基本的な性能評価を実施する.核サンプルを用いたライブラリ作成は2種の方法を考えており,核DNAを対象とした解析と核RNAを対象とした解析であり,現在はそれぞれREPLI-g(Qiagen)およびSMARTer(Clontech)を用いたライブラリ作成を計画している.性能評価に加えてCTC(circular tumor cell)を用いた解析を国立がん研究センターと、神経細胞を用いた解析をStanford UniversityのGeneticsのグループと、また胚細胞を用いた解析をStanford UniversityのSchool of Medicineのグループと協力して進める予定である.これらの展開により実施例を多く集めたいと考えている. これに加えて並列化および自動化マイクロ流体チップを共同研究先に提供するために,その生産技術の検討を行う.現在の試作法では,生産効率が低いこと,不純物の混入の可能性があること等が課題になっており,これらを解決する新たな生産方法を学内外の研究者および技術者と協力しながら進める.
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