2014 Fiscal Year Research-status Report
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26630061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 淳一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40451786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱伝導 / フォノン輸送 / サーモリフレクタンス / プラズモン / 分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存の時間領域サーモリフレクタンス(Time Domain Thermo-reflectance, TDTR)装置を改良して研究を進めた。加熱領域の大幅な低減を狙って、サンプル表面に金ナノアイランドを作成し、ポンプ光を表面プラズモン共鳴によって吸収することで、局所加熱を行った。 はじめに、試料表面に数ナノメートルの金薄膜を蒸着し、高温でアニールすることによって、平均直径が数十nmの金ナノアイランドを形成した。アニール温度によって、金ナノアイランドの平均直径を制御できることがわかっており、これによって金ナノアイランドと基板の接触面積を変化させることを通じて、加熱領域を数十ナノメートルのオーダーで変化させることが可能となる。得られた金ナノアイランドの形状と接触面積は、原子間力顕微鏡と蒸着体積から見積もった。また,材料によっては表面プラズモン共鳴吸光のピーク波長と粒子形状との相関が分かっており、それも適宜用いて計測の精度を向上させた。なお,金ナノアイランド同士の熱的干渉を避けるべく、その数密度は極力低くする必要があるため、金属部分での吸収断面積は小さくなり、測定に必要な加熱量を得るには表面プラズモン共鳴効果が必需であることが確認された。これらによって、加熱・測温領域を数十nmの間で変化させながら、フォノンの平均自由行程に依存した熱伝導率(熱伝導スペクトル)を測定した。ポンプ光の波長に対して透明な試料を対象とし,熱伝導率(平均自由行程)の比較的大きいもの(サファイヤや水晶)から小さいもの(石英ガラス)までを計測した。さらに,フォノン気体のボルツマン輸送方程式にもとづいて弾道フォノン輸送を考慮した熱伝導解析を行い、測定結果と比較することによって、表面プラズモン加熱を用いた本計測手法の妥当性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したとおり、平成26年度に計画したプラズモン加熱を利用した熱伝導分光法の開発が当初の予定通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの金ナノアイランドを用いた手法では、金属ナノ構造以外の測定試料表面にもレーザーが照射されるため、加熱光に対して透明な材料以外は、試料全体が直接加熱されてしまうために正確に測定することができない。そこで、より幅広い材料に表面プラズモン共鳴を用いた局所加熱を適用するために誘電体多層膜を用いる。誘電体多層膜とは屈折率の異なる材料を光の波長の1/4の厚さで積層したフォトニック結晶であり、99 %以上の高い反射率が得られることから高反射ミラーに用いられている。この多層膜を金属の部位以外にコーティングすることで、加熱光が試料全体に吸収されることなく、金属の箇所のみでの加熱・測温が可能になると考えられる。ここで、選択的なコーティングを行う必要があるため、ランダムに分布したナノアイランドに代わって、金属を試料表面に規則的にパターニングする方法を採用する。これには電子ビームリソグラフィやナノスフィア・リソグラフィを用いる。金属パターンのLを数十nmから数百nmに変化させて、それぞれの加熱領域が熱的に干渉しない金属間のピッチを定めて効率よく測定ができるようにする。まずは、物性が既知である単結晶シリコンに対してこの手法を適用し、方法論および測定精度を評価する。これによって、温度が高くなると平均自由行程が短くなるためにこれまで困難であった高温での計測の実践も視野に入れる。例えば、熱電発電の実用温度(400℃~1000℃)における測定できれば、ナノ構造化バルク材料の設計指針に繋がる知見となる。
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Causes of Carryover |
当初、平成26年度に開催される米国材料学会(Material Research Society)の国際学会に参加する予定であったが、論文の発表が平成27年2月となったため、平成27年度の同学会または同様分野の学会で発表することと予定を変更した。それにしたがって、その分の旅費を次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国材料学会または国際熱電学会のど、同様分野の学会で研究成果を発表する。
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Research Products
(8 results)