2014 Fiscal Year Research-status Report
気泡微細化沸騰の伝熱機構へのミクロ液膜モデルの提案
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26630070
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
鶴田 隆治 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30172068)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 沸騰熱伝達 / 気泡微細化沸騰 / ミクロ液膜モデル / 水平白金細線 / サブクール沸騰 |
Outline of Annual Research Achievements |
サブクール沸騰において生じるとされる気泡微細化沸騰(MEB)の伝熱機構を解明するために,飽和プール沸騰の限界熱流束(CHF)を予測するミクロ液膜モデルを適用した理論的検討と,水平白金細線を用いた実験観察の両面からの研究を実施している. まず,ミクロ液膜モデルのMEBへの適用については,サブクール沸騰の場合にも伝熱面上の固液接触構造は飽和沸騰と変わらず,一次気泡の生成・成長と離脱あるいは消滅,そして気泡間のマクロ液膜の寄与が重要であり,サブクール度が大きいには合体気泡がほとんど形成されず,一次気泡の挙動がより重要になる.そこで,一次気泡の生成,成長,消滅および再生成の4つの過程に分け,それぞれの周期を定式化し,全周期を推定した.この全周期より平均熱流束を予測し,既存の実験データと沸騰曲線上で比較した結果,高熱流束領域において高サブクール度の実験値と予測値とが近くなっていることが確認できた. 一方,実験では,線径0.3mm,長さ35mmの白金細線を使用し,サブクール度を10,20,40,50℃に設定して,空間制限の無い水中と,二枚のガラス板で白金細線周りに制限空間を設けたHele-Shaw空間での沸騰様相の観察と沸騰曲線の実測を行った.その結果,高過熱度,高サブクール度においては,気泡の生成消滅周期は前述のミクロ液膜モデルによる予測値に非常に近くなり,沸騰曲線もほぼ一致することがわかった.しかしながら,2mm,1mmとHele-Shawの制限空間が狭くなるとCHF点が低下し,早くバーンアウトする結果となり,いずれもMEBの発生は観察されなかった.Hele-Shaw制限空間を用いる目的の一つであった細線で水平伝熱面と同等の効果を期待したにも関わらず,MEBを生じさせることができなかったことから,MEBの発生には伝熱面の熱容量が十分に大きいことが必要であると推測するに至った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画では,ミクロ液膜モデルによるMEBの理論的予測を一つの目的としている.面平均の熱流束は,発生気泡の生成密度が与えられれば,気泡の発生,成長,凝縮消滅,そして待ち時間を経ての気泡の再形成の4過程に必要とする時間を定めることによって求めることができる.すなわち,気泡の全周期が定式化できれば理論的に熱流束を算出することができる. 平成26年度は,サブクール度の強い場合に凝縮速度が大きく,さらにはMEBが生じる高過熱度域では気泡発生の待ち時間が短いことを考慮して,全周期における気泡成長期間が支配的とみなして理論的な評価を行い,実験値と比較してよく一致することが確認できた.従って,理論面での課題はほぼ達成できたと考えられる. 実験においては,一次気泡の観察は高速度カメラを用いて良好な状態で行われており,特に映像から評価される一次気泡の周期を得ている.しかしながら,制限空間を与えるHele-Shaw空間における実験では,低過熱度でCHFを迎えたことから,十分な高温状態での沸騰が実現できない状況となった.したがって,MEBの観察ができておらず,細線ではMEBは生じないという他の報告と同じ結論になり,MEBの発生条件に流体側ではなく,加熱面側の影響が大きいと推論される.特に,加熱面の熱容量が重要だと考えており,これらの知見が平成26年度の実験によって得られたことから,概ね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年は,26年度の結果をもとに,サブクール度の影響を理論モデルに含めることを目指すとともに,MEBの実験観察を目的としたサブクール実験を行う.すなわち,理論においては凝縮消滅速度を定式化することによりサブクール度の効果を表現し,気泡サイクルの実験観察結果と比較検証する.また,水平伝熱面を用いることを考え,MEB発生条件に及ぼす伝熱面熱容量の影響を検討する.加えて,高加熱面と水との直接接触によって発生する蒸気爆発現象との関連を追及してみたいと考えている.
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Causes of Carryover |
次年度使用額となる約80万円は,そのほとんどが物品費の予定額と使用額との差額となっている.その理由は,実験水槽を外注して製作する予定であったが,期間短縮を優先するために簡易なガラス製品などを用いて学内製作を行ったことが最も大きく,さらに実験消耗品のうちで最も高価な白金細線の消耗が計画より少なかったことなどがあげられる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに交付される予算は60万円とかなり少額なため,次年度使用が許されれば,研究目的を達成するためにかなり有益となる.特に,平成26年度の研究を遂行した結果,伝熱面を新たに製作する計画が浮上してきたので,物品費に計上して使用していきたいと考えている.
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Research Products
(1 results)