2014 Fiscal Year Research-status Report
気液界面の温度差・濃度差によるマランゴニ対流を駆動源とする医療用微細泳動エンジン
Project/Area Number |
26630073
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
丹下 学 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (70549584)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微細加工 / マランゴニ対流 / 泳動デバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,生体内で治療や薬剤運搬を行うマイクロロボットの新たな駆動機構を創出することを目的に, 気液界面上の温度差・濃度差によって生起するマランゴニ対流を用いた微細泳動エンジンを開発している. 平成26年度には,研究計画に従って実験系の構築を行い,比較的大きなスケールで駆動原理の確認を行った.具体的には,1)泳動エンジン周りのPIVによる流体場計測・泳動エンジンの駆動力測定が可能な透明実験水槽を設計・製作し,観察系を構築した.2)MEMS加工技術を用いて,気液界面をもつデバイスを製作した.3)加熱用レーザによって微細泳動エンジンの持つ気液界面に温度差をつくり,マランゴニ対流を確認した.4)流体場解析のための計算機環境を構築し,粒子法を用いた計算コードが実行できることを確認した. 実験の結果,PIV計測により微細泳動エンジン周りのマランゴニ対流の発生を確認し,計画時点で想定された流れ場が生まれることを実証できた.しかし,同時に自然対流の影響が大きいことも確認され.駆動したい方向だけではなく,デバイスを回転させてしまう方向にも力がかかりうることがわかった.駆動力を増すために温度差を大きくすると,同時に自然対流も大きくなり,自然対流による流れは重力方向に依存するため,任意の方向に駆動力を得るという本来の目的には合致しない.温度差マランゴニ対流による駆動ではこの問題を回避することは難しいため,今後は濃度差マランゴニ対流を駆動原理の中心に据えて,計画通りに研究を遂行する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験系の構築は完了し,予備的な実験を予定通り遂行できた.しかし,微細デバイスにおいても自然対流の影響が大きく,温度差マランゴニ対流では適切な駆動力が得られないことが判明した.今後は濃度差によるマランゴニ対流を利用し泳動するデバイスを設計し,駆動力の測定を行う.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には,研究計画に従い,濃度差マランゴニを利用する泳動エンジンの駆動力測定を行い,同時に泳動エンジンの微細化を進める.流体場解析については,粒子法を用いた気液界面を含む流体計算に濃度差マランゴニによる影響を加えた計算手法を検討する.下記に各計画の具体的な推進方策を述べる. 1)濃度差マランゴニ対流:昨年度と同様の泳動エンジンを作成し,駆動力測定用の金属細線に接着する.不均一な濃度場の形成には,はじめにマイクロチューブによる薬液の注入を用い,次にデバイスに塗布した薬品と流体中の薬品との化学反応を用いる予定である. 2)微細エンジン作成:加工工程は昨年度と同様に,サイズを微細化したエンジンを作成する.微細化した場合には,製作物の保持や駆動力の測定が困難になることが予想されるが,犠牲層の一部をエッチングせずに金属細線として残すことで,0.1 mmオーダの泳動エンジンでも1)の方策を実施する. 3)粒子法計算:現時点では,新しい計算機環境で粒子法のプログラムが動くことを確認するにとどまっている.はじめに簡単な計算系で表面張力の不均一を表現するモデルの評価を行い,年度後半に実際に近い計算系での数値実験を行う. 4)国際会議における成果発表:温度差マランゴニを用いた泳動デバイスにおいても,デバイスを駆動する方向に流れが生まれていることは確認できている.濃度差マランゴニによる評価実験を迅速に行い,第一報を国際会議で報告し,研究者による意見を得る予定である.
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