2014 Fiscal Year Research-status Report
タコの吸盤を参考とした臓器を安全に吸着把持するソフトフィンガー
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26630091
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
塚越 秀行 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50313333)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ソフトメカニクス / アクチュエータ |
Outline of Annual Research Achievements |
腹腔鏡手術は、腹部にあけた5~12mm程度の穴(トロカール)から内視鏡や鉗子を挿入する低侵襲操作のため、患者への負担は少ない。その反面、患部に被さる臓器が内視鏡の視界を遮り、医師の手術を妨げる事態が生じる。現状では、臓器の掴み・吊上げ・押しのけ、などの圧排用手術器具を利用して視界の確保が試みられているが、これらの従来器具は臓器を傷める懸念があり、術後の回復を遅らせたり合併症を誘発するなどの問題が残されている。 そこで本研究では、多様な凹凸面に吸着するタコの吸盤を参考に、人体臓器を安全に吸着把持してハンドリングできるソフトフィンガーの創製に挑むこととした。すなわち、腹腔鏡手術において、直径12mm程度の穴を通じて腹腔内に挿入後、術者の視界を遮る臓器を傷つけずに圧排する手術器具の具現化を試みた。その第一段階として、臓器表面の体液を吸引することなく臓器を吸着させるために、従来の直接吸引とは異なり、弾性膜の変形を介して間接的に負圧を生成する可変容積式吸盤の設計方法を構築した。具体的には、i) 可変容積式吸盤で使用する弾性膜として、望ましい変形特性の検討、ii) 吸着力を生成する原理のモデル化を行い、限られたスペース内で吸着力を最大化する最適設計法の誘導、iii) 最適設計をもとに吸盤を試作し、多様な肉に対する吸着特性の検証、などを行った。試作した吸盤装置は内径12mmを有し、4個の吸盤を利用することにより、1kg程度の豚の臓器,鳥の胸肉,肝硬変を模したゆでた豚の肝臓,豚バラ肉の脂肪部などを吸着把持できるだけの性能を有することがあきらかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臓器表面の体液を吸引する恐れなく吸着可能な可変容積式吸盤を試作し、当該吸盤の基本原理の有効性と臓器の吸着把持に適用できる可能性を検証できたという点においては、研究が順調に進展したものと判断できる。しかし、当該吸盤をソフトフィンガーに搭載し、馴染み動作の検討、および硬さが異なる臓器への対応に関しては、課題を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
試作した可変容積式吸盤をソフトフィンガーに搭載し、直径12mm程度の穴を通じて腹腔内に挿入後、臓器への馴染み動作が行えることを検証するとともに、硬さが異なる臓器への対応に関して歯板付き漏斗を導入し、これらの有効性を確認する予定である
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Causes of Carryover |
平成26年7月に、当初の予定より強力かつ安定に吸着力を生成できる新たな吸盤構造を発明した。この発明は、本研究の目的である臓器を安全に吸着把持する際の操作性の向上に深く関与するため、その有効性を新たに検証する必要が生じた。これにより、当初の予定であるソフトフィンガーの開発研究を一時停止し、新たに発明した吸盤構造の検証の方に時間を割くこととなり、未使用額が発生することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに発明した吸盤構造の検証が終わった後、当該吸盤構造をソフトフィンガーに搭載するための開発研究、および多様な硬さの臓器を吸着把持できることも確認していく予定である。
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Research Products
(2 results)