2014 Fiscal Year Research-status Report
ソフトマテリアルを用いたパッド型ドラッグデリバリーシステム
Project/Area Number |
26630095
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
秦 誠一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50293056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝尻 瑞枝 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70586594)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | MEMS / ドラッグデリバリーシステム / ソフトメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,日常動作によるランダムな外力を駆動力とし,温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブにより送液量と,そのタイミングの制御を可能とする全く新しいドラックデリバリーシステム(以下,DDS)の構築を目的とする. 本DDSは,従来のDDSに比べ,以下のような特徴を有する.(1)小型の絆創膏程度の大きさ,柔軟性を有し,低価格で使い捨て可能.(2)マイクロニードルを含む経皮吸収型DDS以上の投与時間,投与量とその制御性.(3)マイクロポンプ型DDS以上の小型,柔軟,極低消費電力. 上記目的を達成するために,本年度では以下の研究を行い,成果を得た. (1)パッド型DDSの基本設計 1)薬液タンクを兼ねた柔軟パッドの容量,材質,柔軟性の検討:薬液タンクを兼ねた柔軟パッドの材料として,ポリエチレングリコールジアクリレートを選定し,その配合調整により,弾性を任意に調整し,設計通りの弾性,厚さを有する柔軟パッドを実現した.2)リザーバ容量と送液メンブレンの弾性の検討:,薬液としてインスリンを想定しリザーバ容量と送液メンブレンの弾性を決定した.3)温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブの製作:本研究では,感光性温度応答性ゲルを用いることで,MEMSプロセスにより所定の流量を確保できるマイクロバルブを作製し,設計のための基礎データを得た.4)投薬用マイクロニードルの実現:注射針状のマイクロニードルを,マイクロバルブなどが高分子MEMSプロセスにより製作されたパッド部に一体的に製作する方法を検討し,ポリ乳酸を用いたプロセスを実現した. (2)高分子フィルム上に製作するプロセス設計 PMMAの基板上にMEMSプロセスにより温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブと流路を形成し,別途製作したポリエチレングリコールジアクリレート製送液メンブレンや薬液タンクを兼ねた柔軟パッドを接着する方式を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)パッド型DDSの基本設計 1)薬液タンクを兼ねた柔軟パッドの容量,材質,柔軟性の検討:柔軟パッドに必要な条件を満たす材料の候補として,ポリエチレングリコールジアクリレートを見出した.この材料は配合調整により,弾性を任意に調整することが可能であり,柔軟パッドや送液メンブレンを設計通りの弾性,厚さに製作することが可能となった.2)リザーバ容量と送液メンブレンの弾性の検討:リザーバ容量は,薬液としてインスリンを想定しその容積を決定した.送液メンブレンにどの程度の剛性が適切であるかを,有限要素法を用いた構造体のシミュレーションにより決定し,送液メンブレンの弾性,厚さをどの程度に調整するか決定した.3)温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブの製作:本研究では,感光性温度応答性ゲルを用いることで,MEMSプロセスにより,所定の流量を確保できるマイクロバルブを作製した.各種サイズのマイクロバルブを作製し,その流量特性,消費電力などを測定し,バルブとしての特性を明らかとし,設計のための基礎データを得た.4)投薬用マイクロニードルの実現:日常動作による外力を駆動力とした加圧により送り出された薬液を皮下に注入するための注射針状のマイクロニードルを,マイクロバルブなどが高分子MEMSプロセスにより製作されたパッド部に一体的に製作する方法を検討し,マイクロニードルの製作材料としては,生体適合性を材料であるポリ乳酸を用いたプロセスを実現した. (2)高分子フィルム上に製作するプロセス設計 以上の検討により設計したパッド型DDSを,高分子フィルム上に製作するためのプロセスを検討した.具体的にはPMMAの基板上にMEMSプロセスにより温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブと流路を形成し,別途製作したポリエチレングリコールジアクリレート製送液メンブレンや薬液タンクを兼ねた柔軟パッドを接着する方式を検討した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,以下の項目について研究を推進する. (1)製作プロセスのブラッシュアップと統合検討:平成26年度の検討で提案するパッド型ドラックデリバリーシステムの各部パーツの製作プロセスはほぼ完成したが,一部に接着などの組立工程が多く存在する.接着は液漏れなどパッドの不具合の原因となるため,型成形,キャスティングなどの技術を用いて各パーツを一体的に成形・結合するプロセスを検討する. (2)日常動作で安定的に薬液を送出するためのバルブ開閉タイミングの決定:提案するパッド型ドラックデリバリーシステムの原理を確認するため,温度応答性ゲルを用いたマイクロバルブや薬液タンクを兼ねた柔軟パッド,リザーバ,マイクロニードルを一体製作したパッド部と,制御用回路とその電池を別個に製作し接続する.制御回路の入出力信号はワイヤレスデータレコーダによりワイヤレスで記録する.これを用いて日常動作で安定的に薬液をリザーバに充填後,その薬液を,送液メンブレンを介した加圧によりマイクロニードルから皮下に注入する一連のプロセスを実現するため,マイクロバルブの適切な開閉タイミングと,その時間を被験者の協力を得て決定する. (2)タイマICの試作とボタン電池による動作確認:上記検討で決定したマイクロバルブの適切な開閉タイミングと,その時間をプログラミングしたタイマICを企業研究者の協力を得て実現し,ボタン電池と共にパッド部に実装する.吐出量測定用のダミー皮膚をパッド下面に装着し,ランダムな外力を利用しても,想定通りのタイミング,分量を吐出できているかを検証する. (3)研究の総括と今後の課題の抽出:最後に,研究の総括を行い,今後の課題について検討する.
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Research Products
(4 results)