2014 Fiscal Year Research-status Report
パワー半導体への適用を目指した液体プロセスによるSiC膜の研究
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26630127
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 聡 北陸先端科学技術大学院大学, グリーンデバイス研究センター, 特任教授 (60553237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳光 永輔 北陸先端科学技術大学院大学, グリーンデバイス研究センター, 教授 (10197882)
下田 達也 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (70447689)
増田 貴史 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (70643138)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Silicon carbide / Solution process / Power device / Liquid material |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、液体シリコン材料(シクロペンタシランやシクロヘキサシラン)と、液体カーボン材料(シクロヘキセン等)を原料として液体SiC材料(SiC-ink)を合成し、これを用いてSiC薄膜を作製することに成功した。またこのSiC-inkに白燐やデカボラン等の不純物を添加することで、n型SiC膜、及びp型SiC膜も作製できる。 平成26年度は主にSiC-inkとそれにより作製したSiC膜の基礎物性評価を行った。SiC-inkに3wt%のデカボランを添加したp型SiC-inkを合成し、液相蒸着法によりp型Si膜を形成した。SiC-inkの合成に際して、シリコンソースであるシクロペンタシランとカーボンソースであるシクロヘキセンの比率を変えたp型SiC-inkを作製した。それらを用いて成膜し、Inverse photoemission spectroscopy (IPES)やPhoton yield spectroscopy (PYS)等により解析したところ、Valence band maxima (VBM)とConduction band minima (CBM), Band Gapの両方が、シリコンソースとカーボンソースの比率の変化に伴い変化することを見出した。現在、この研究成果に関する論文を執筆中である。更にこの特徴はSiCパワーデバイスの性能向上、特にP+SiC領域と金属配線のコンタクト部におけるコンタクト抵抗低減に有効であり、平成27年度は実デバイスへの適用についても検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の様に平成26年度はp型SiC膜の物性評価において新たな知見が得られた。平成27年度は実デバイスへの適用について検討を行うが、それを効率良く推進する為に、企業との共同研究をスタートする。またP+SiC領域と金属配線のコンタクト部におけるコンタクト抵抗低減効果を確認する為、評価用のフォトマスクを設計した。またコンタクト抵抗測定用サンプルを作製する為に、製造プロセスの構築にも着手した。更にSiC膜のエピタキシャル成長実験の為の環境構築も平行して進めている。 以上のことから、今年度は概ね計画通りに研究を推進出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はSiCパワーデバイスへの応用とSiC膜のエピタキシャル成長の可能性を検討する。 ① SiCパワーデバイスへの応用 SiCパワーデバイスにおいて、n型SiC / p型SiC領域は、SiC膜の結晶性を維持・回復させる為、500℃程度で高温イオン注入を行った後、1700~1800℃の高温アニールで活性化して形成している。この場合、深いp層の形成は、高加速イオン注入の多段打ちが必要であり、スループットの向上が求められている。また、熱拡散により不純物層を形成する方法は、SiC中の不純物拡散速度が遅い為困難である。そこで液体プロセスを適用することにより、この問題を解決しようと考えている。その場合、n型SiC領域、p型SiC領域の作り分けが課題となるが、前述のLVD法によるコーティングの際、マスキングすることで所望のパターンを形成出来る。この様にして、SiCパワーデバイスへの適用を実現したい。 ② SiC膜のエピタキシャル成長の可能性検討 現在のSiC-MOSFETでは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によりSiC膜をエピタキシャル成長させてチャネル膜を形成している。この時、1600~1800℃の高温処理が必要であり、製造装置は非常に高額となる。本研究では、SiC基板上に液体プロセスを用いてSiC膜をエピタキシャル成長させ、それをチャネル膜として用いることを目標にしている。この時の課題は膜質であり、平成27年度はその可能性について検証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度の研究計画として、① SiC-ink とそれにより作製したSiC 膜の物性評価と特性向上、② 及び不純物ドープ方法の確立等の基礎研究を遂行するにあたり、特に物性評価において外部機関への分析依頼を予定していたが、研究代表者の所属研究機関である北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)所有の分析装置でかなりの程度の分析が行えたため、外部機関への分析依頼費用が当初予定より抑えられた。また、実験消耗品等についてもJAISTの共用施設等を使用する機会が多かったため、予定より支出が少なくなり、未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度はSiC パワーデバイスへの応用検討を研究計画としているため、消耗品の使用量と頻度が高くなると予想される。具体的にはSiC基板の購入、Alイオン注入の工程依頼、外部機関への分析依頼等を計画している。また今年度は論文発表、学会発表等も予定しており、旅費等に使用する。
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