2014 Fiscal Year Research-status Report
半導体に精密添加された希土類イオンに起因する量子情報機能の開拓
Project/Area Number |
26630131
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤原 康文 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10181421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 希土類添加半導体 / 量子情報機能 / エピタキシャル |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体ナノ構造の物性の理解により、量子情報を操作することができる量子情報デバイスが実現されるようになり、量子コンピュータへの発展が期待されている。本研究では、究極の量子ドットである希土類イオンに着目し、希土類添加半導体を新しい量子情報機能材料として位置づけ、精密添加された希土類イオンに起因する量子情報機能を明らかにすること、希土類添加半導体の成長条件や共添加不純物の最適化を通じて、希土類添加半導体を用いた量子情報デバイスの実現可能性を明らかにすることに課題を設定している。 今年度はEu添加GaNに関して、「Eu添加条件の最適化(課題1)」、「Euイオン間で生じる双方向エネルギー輸送現象の理解(課題2)」に取り組んだ。その結果、以下の知見が得られた。(1)双方向エネルギー輸送を示す2種類のEu発光中心(OMVPEαとOMVPEβ)をマジョリティーとして形成するために、成長条件(成長圧力、成長温度、Ⅴ/Ⅲ比)の最適化を行った。Combined excitation-emission spectroscopy (CEES)法により評価し、OMVPEαとOMVPEβの明らかな存在を確認した。(2)上記の2種類の発光中心間で生じる双方向エネルギー輸送現象に対して、励起レーザパワー依存性や時間分解特性を評価し、エネルギー輸送時間がサファイア基板上で100 μs程度であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Eu添加GaNに対する国際共同研究が軌道に乗り、(1)原子レベルで制御して「ソフト」にEuをGaNへ添加する技術、(2)Eu添加GaN中に形成されるEu局所構造を、Eu発光特性と関連づけて明確に評価する技術、(3)第一原理計算によりGaN中で形成されるEu局所構造とその安定性を評価する技術が三位一体となり機能している。その結果として、本研究課題で取り上げる「Eu イオン間で生じる新奇な双方向エネルギー輸送現象」について定量的な理解が着実に進んでおり、全貌が明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究課題を継続的に発展させながら、2種類のEu発光中心間で生じる双方向エネルギー輸送機構のデザイン、および量子情報デバイスへの応用可能性の検証に取り組む。 【課題3】 Euイオン間で生じる双方向エネルギー輸送現象のデザイン: 昨年度に得られたEuイオン間で生じる双方向エネルギー輸送現象の理解を踏まえて、より効果的なエネルギー輸送現象が生じるようにEu発光中心の設計を行う。これまでの研究において、成長に用いる基板により、双方向エネルギー輸送現象が大きく変化することが明らかになりつつある。各種基板上に成長した試料において、それらEu発光特性を系統的に評価し、観測される双方向エネルギー輸送現象を定量的に明らかにする。 【課題4】 量子情報デバイスへの応用可能性の検証: Euイオン間で生じる双方向エネルギー輸送現象は異なる量子状態にあるEuイオン間で相互の量子状態に重ね合わせが生じることを意味している。その特性を最大限に活用して、量子メモリーや量子リピーターへの応用可能性を検証する。また、これら量子状態での可干渉性を評価するために、光子相関測定を行い、量子暗号に不可欠なシングル・フォトン・エミッターへの応用可能性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究で使用する消耗品の一部を定価より安価に購入できたこと、運営費交付金や奨学寄付金により以前、別用途で購入し、不要となったものを流用できたことに因っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「次年度使用額」については有効に活用し、主に最終年度に増加が見込まれる研究成果発表に伴う参加登録費に充てる予定である。
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