2014 Fiscal Year Research-status Report
アモルファス磁性細線磁壁駆動スピン発電高出力化への挑戦
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26630137
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
粟野 博之 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40571675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
バン ド 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40624804)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン発電 / スピン軌道相互作用 / 希土類遷移金属 / 磁性細線 / TbFeCo / スピン起電力 / 磁壁移動速度 / スピンオービトロ二クス |
Outline of Annual Research Achievements |
まず初めにTbFeCo磁性細線中の磁壁移動に伴う発生電位測定にチャレンジした。試料作製方法は、Si基板上にレジストを塗布し、線幅1ミクロン、長さ30ミクロンの細線パターンを電子線ビーム露光法で形成し、その上にマグネトロンスパッタ装置でTbFeCo薄膜を成長させた。保護膜にはPtを用いた。これをスパッタ装置から取り出して、リフトオフ法で余分なレジストを除去し、TbFeCo磁性細線を作成した。これに電極を形成した。磁壁移動によるスピン発電の検出にチャレンジするために測定装置を組み立てているが、まずは簡単な方法でスピン発電の味見実験を行った。 作成した試料を偏光顕微鏡の電磁石ステージにのせ、細線両端の発生電位を測定する機器類に接続し、試料を着磁したのち外部磁界で磁壁を細線中に注入した。細線両端の電極を帯域1GHzの高速アンプ(増幅率30dB)に接続し、その出力を帯域2GHzの高速デジタルオシロに入力し、発生信号を検出した。再現実験での確認が必要であるが、外部磁界を500Oe引加したとき出力は3μVと大きな値が得られた。これは従来FeNi合金磁性細線で報告されてきた1μVの3倍である。 今回のTbFeCo磁性細線の保磁力は2kOeと大きいので更に大きな外部磁界を印加できればその分大きな出力が得られるはずである。今回用いた電磁石ステージは最大10000Oeまで出せるLの大きなコイルであり高速磁界印加できないが、これとは別に組んでいるTMR磁気ヘッド測定系を使えば高速磁界駆動可能になり、安定したスピン発電評価が期待できる。 来年度は、理論が示す外部磁界に比例したスピン発電出力の確認、希土類遷移金属のスピン起動相互作用とスピン発電の関係などを明らかにし、磁壁の数とスピン発電の関係も明らかにする。更に、磁壁を複数同時に移動するスピン発電出力増大の検証も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標はTbFeCo磁性細線におけるスピン発電の原理確認であり、まだ1例ではあるがスピン発電出力3μVの結果を得た。この測定に必用なプローブ改良により測定することができた。これは従来報告例FeNi合金の1μVの3倍である。FeNi合金の場合には、何回も磁壁注入、磁壁移動を繰り返し、これを積算しなければ測定できないくらい不安定な信号であったが、今回のTbFeCoの場合には、比較的大きな安定した信号が得られたため、積算することなく1発で信号をとらえることができた。本研究課題の素性の良さを示しているものと考えられる。また、磁壁移動には磁性細線エッジの移動抵抗が問題となる。通常の磁性細線作成法は試料一つ一つをエッチング法で作成するために細線エッジ荒れがひどく、磁壁移動の障害になっている。しかし、我々の発案したナノインプリント磁性細線作成法では、プラスチック基板上に磁性細線パターンを形成し、磁性細線をエッチング加工することなく得ることができるため細線エッジ荒れがほとんどない。その結果、電流磁壁駆動電流を従来よりも一桁低減できた。これは磁壁移動抵抗エネルギ低減になるためスピン発電にも有効であると期待している。このような成果も得られた。来年度は、早期に実験再現性確立し、スピン発電高出力化への取り組みを進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まず初めに昨年のTbFeCo磁性細線におけるスピン発電の再現確認を行う。更に、スピン発電力増大のための方策①印加磁界増大による出力増大(理論では出力は磁界に比例)、②磁壁枚数に比例した出力増大、③TbFeCoに隣接する重金属材料(Ptなど)のスピンホール効果やジャリシンスキー守谷効果による磁壁スピン構造を利用した高出力化(スピン発電に有効なスピン運動があるはずで、それを明らかにする)、④平滑で磁壁移動障壁の少ないプラスチック基板を用いたナノインプリント磁性細線作成法による高出力化(本年度の成果利用で磁壁移動抵抗の低減)、⑤TMR磁気ヘッドを用いた新しいスピン発電出力測定系の確立により磁壁を高周波駆動することによる高周波スピン発電による高出力化(TMR磁気ヘッドは最高1GHzで最大10000Oeの磁界発生が可能。この高周波磁界で磁壁を高速振動させると高周波スピン発電出力が得られる)、⑥磁性細線内に複数磁壁を作成し、これらを同時に移動させる測定系を確立して、その測定系を利用した高出力化(単に磁界で磁壁を動かすと、磁壁は互いに反対方向に移動して発電出力をキャンセルするため、すべての磁壁を同一方向に移動する必要がある。それを実現できる測定系と試料作製が必要である)などの検討を行う。
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Causes of Carryover |
プローブカードの仕様が当初計画より簡素化できたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しい機構を盛り込んだプローブカードの製作
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