2015 Fiscal Year Annual Research Report
アモルファス磁性細線磁壁駆動スピン発電高出力化への挑戦
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26630137
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
粟野 博之 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40571675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
バン ド 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (40624804)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン発電 / 磁性細線 / スピントルク / スピンオービタルトルク / ヘテロ界面 / 磁壁駆動 / 希土類遷移金属 / 磁壁移動速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度はTbFeCo合金で磁性細線を作成し、この細線上に磁壁を1枚作り、これのパルス磁界駆動により3μVのスピン発電を見出した。これは、既報告発電最大値(FeNi磁性細線)よりも3倍の発電量である。そこで、今年度は磁壁移動と発電の関係をより詳細に調べて更なる発電量増大を目指した。 材料としては、保磁力が小さく磁界で磁壁が動きやすいGdFeCo合金、保磁力が大きく磁壁が動きにくいTbFeCo合金およびTbCo合金、Tb/Co多層膜を利用した。また、磁壁の動きは、磁性層と接する非磁性材料とのヘテロ界面により大きく影響を受ける。これは非磁性材料がPtのような重金属の場合、ジャロシンスキー守谷相互作用(DMI)、電流を流すことによるスピンhall効果(SHE)が大きくなり、磁壁移動による伝導電子のスピントルク駆動を妨げる可能性も考えられる。これらはスピンオービタルトルクと呼ばれている。そこで、これらを詳細に調べた。ただし、記録層に用いているGdやTbは重金属であり、これ自身も大きなDMIやSHEの影響を示すため、現象はかなり複雑になる。 原研の家田氏のスピントルク発電量理論値は外部磁界3kOeの場合30μV程度であるのに対し、我々はTbFeCo磁性細線の材料改善と測定方法改善により1枚の磁壁で発電量を46μVにまで増大することに成功した。実験結果は理論値より約1.5倍大きな発電量となっており、この差は上記ヘテロ界面から受けるスピンオービタルトルクの影響と考えられる。ただし、磁壁移動速度が遅い場合にはスピン発電がほとんど見られなかった。これは、磁壁移動速度が遅くなると、生成したスピン流を維持することに起因していると考えられる。今後、スピンオービタルトルクとスピントルクの両方をともに増強する手法を見出して、発電量の限界値を明らかにし、磁壁枚数で発電を増量したボルト級の発電実現を目指す。
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